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UPDATE|2024/05/29

人間と猿、いつの時代も文明によって破滅に進む『猿の惑星/キングダム』

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フランスの作家ピエール・ブールが人間の本質やテクノロジーへの批判として執筆した小説を、SF要素を強めて映画化した『猿の惑星』は1968年に1作目が公開された後、テレビドラマ、コミック、アニメと多くのメディアで展開されてきた。何世代にもわたり、多くのファンを抱える人気シリーズの最新作『猿の惑星/キングダム』は前作から約7年ぶりに公開となる。

【写真】『猿の惑星/キングダム』場面写真

そもそも「猿の惑星」というシリーズは、”猿”という設定ではあるものの、人間を俯瞰で見た比喩的存在を猿として、人間の在り方を描いてきた社会派な一面を持った作品であったが、今作は正に”ソコ”を改めて追及して描いたものとなっており、ピエール・ブールの描きたかった本質に近づいているともいえるのではないだろうか。

基盤となっているのは、2011年からスタートした『猿の惑星: 創世記』からなるリブート版「猿の惑星」シリーズであり、人間が作り出したシーザーの目線を通して様々なことが描かれてきた。ところが今作では、シーザーが主役のシリーズ最終作である『猿の惑星: 聖戦記』(2017)から約300年後という設定。

つまりシーザーは亡くなっており、伝説的存在として名前しか出てこない。もはやシーザーという存在もかつて人間が猿を飼っていた時代を知る世代もいなくなってしまった時代が舞台。

そして人間社会は完全に崩壊し、ついに本当の意味で”猿の惑星”となっている時代である。

シーザーは伝説として崇拝されているが、解釈の違いから間違った信仰によって武力行使が行われているという、もはや人間社会そのものとなっており、そのなかで誕生したのが独裁者プロキシマス・シーザーだ。

プロキシマス・シーザーは、あるシェルターを発見し、そこにかつての人類の文明が遺されていると信じており、それを手にすることで世界をより良いものにしようとしている。

プロキシマス・シーザーのやり方としては、強引で独裁的な部分もあるが、彼なりの正義感を持っているのも事実である。大切なのは、そこでどういった決断を下すかによるが、文明というものがあるが故に、その判断を狂わせる。

つまりそれは”武器”のことを意味しているのだ。


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