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UPDATE|2024/01/27

羽鳥善一、山下達夫、タナケン…『ブギウギ』でスズ子を取り巻く”一流おじさん”たちの存在感

日帝劇場・稽古場にて。会議中の羽鳥善一(草彅剛)。『ブギウギ』第26回  写真◎NHK



そんな山下の目利きによって、スズ子は喜劇王・棚橋健二(生瀬勝久)と出会うことになる。世間から”タナケン”として知られる棚橋は、『ブギウギ』きっての”クセ強おじさん”。喜劇王と呼ばれていながら裏では一切笑顔を見せず、スズ子との共演にも気が進まない様子を見せていた。

スズ子がどんな芝居をしようとも、タナケンは叱りも褒めもしない。しかしそれは後に、スズ子の潜在的な魅力を引き出すためだったと分かる。台本を無視して関西弁で台詞を言ったスズ子に、タナケンは「面白いね」と目を光らせ、それを採用したのだ。これは善一の”バドジズ指導”と同じようなもので、タナケンもスズ子自身が持つコミカルさを見抜き、感情が剥き出しになるのを待っていたのかもしれない。スズ子をタナケンの舞台に推薦したのが善一ということも、なんとなく腑に落ちる展開であった。

タナケンは「何をやっても、僕が全部受けてあげるよ」とスズ子に声をかけ、結果舞台は大成功。「こうしろ」「ああしろ」と指示をせず、ただそこでどんと構えて受け止めるタナケンの姿はまさに”王”であった。そしてスズ子もすっかりタナケンのファンになり、史実ではその後、笠置シヅ子とエノケンこと榎本健一は何度も共演を果たしている。

スズ子の元に集まった3人の”一流おじさん”たちは、何もドラマの展開上の都合だけで登場してきたわけではない。彼らだけではなく、他の人物たちとの出会いも、すべてはスズ子が選択して進んだ道の先で自然に作られた縁なのだ。

「歌が好き」という気持ちだけで飛び込んだUSK。何度も先輩から怒られながらとにかく舞台に挑み続け、自分の意思で東京へ。小夜(富田望生)という付き人に出会い、楽団を作り、慰問先で愛助という最良のパートナーに出会い…。いつもスズ子は自分の気持ちに正直に、そして”義理と人情”を持って周囲の人たちと向き合ってきた。

それぞれが自分の信念や理想、美学を持つ芸能の世界で、スズ子が”一流おじさん”とバディを組めたのは、その真っ直ぐさと「歌が好き」という強い気持ち、そして天性の面白さを持ち合わせていたからだろう。幼少期の鈴子を見てきた視聴者ならば、きっと3人のおじさんとの出会いは必然だったと納得できるはずだ。

スズ子が今歩んでいる道の先には、一体どんな出会いが待っているのだろうか。新たな”おじさん”キャラの登場にも期待しながら、福来スズ子の人生を覗き見し続けたいと思う。

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AUTHOR

音月 りお


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