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UPDATE|2023/12/09

水樹奈々、μ's…かつての“声優枠”はどこに?『紅白歌合戦』に声優が出なくなった理由

『ラブライブ! μ's Final LoveLive! ~μ'sic Forever♪♪♪♪♪♪♪♪♪~』DVD(ランティス)



また出場枠の奪い合いという目線でみれば、いわゆる歌い手やボカロP出身のアーティストが増えていることも逆風と言えそうだ。今年の出場者でいえばAdoや「すとぷり」、YOASOBIがこのジャンルに該当するが、いずれも若者から圧倒的な人気を集めているアーティストたちだ。

当然ながら、番組としては各世代の視聴者を意識する必要がある。そのため若者向けアーティストの枠が埋まったことで、声優が出場するハードルが以前より高くなってしまったのではないだろうか。

振り返れば「μ’s」の出場は、分岐点だったようにも思われる。当時はアイドルアニメの爆発的なブームがあり、それを社会現象のように扱う風潮もあった。今もアイドルアニメ発のユニットは多数活躍しており、同じ『ラブライブ!』シリーズなら「Aqours(アクア)」「虹ヶ咲学園スクールアイドル同好会」「Liella!(リエラ)」の活躍は目覚ましい。

ただ、アイドルアニメ自体の爆発的なブームは過ぎ去りつつあり、ファンが純粋に楽しむコンテンツという地位に落ち着いている印象だ。これはコロナ渦によるリアルイベントの相次ぐ中止によって、アニメ業界全体がアニソンの“売り方”を変えたということも関係しているだろう。

さらにここ数年の変化といえば、アニメファンがネット発のアーティストを積極的に追うようになったことも印象的。アニメファンが聴く楽曲の選択肢が以前よりも増えており、声優やアニソン歌手でなくとも熱烈な応援を集めるようになっている。

こうした状況をまとめると、アニメがお茶の間に浸透していき、アニソンが特殊な文化ではなくなったがゆえに、声優の『紅白』出場が減ったという風に捉えられそうだ。そもそも声優が『紅白』で活躍したことで、アニメ文化が世間に広まっていったという過去を思えば、いささか皮肉な話ではある。

しかしこれは、必ずしも悪い現象ではないだろう。おそらくはアーティスト路線が控えめになった影響で、最近ではアニメに出演する声優の純粋な“演技力”が注目を浴びるようになっている。声優が役者として評価されるようになった現状は、一種の原点回帰とも言えるはずだ。

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