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UPDATE|2023/11/03

原爆と戦争への恐怖をより鮮明に描き出した本質版”ゴジラ”が完成『ゴジラ-1.0』

(C)2023 TOHO CO., LTD.

「ゴジラ」生誕70周年記念作品として制作され完全新作『ゴジラ-1.0』が11月3日から公開された。

【写真】随所に1作目へのオマージュも…電車をくわえるゴジラ場面写真

監督を務めるのは、『ALWAYS 続・三丁目の夕日』(2007)のオープニングでゴジラを登場させ、西武園遊園地のアトラクション「ゴジラ・ザ・ライド 大怪獣頂上決戦」ではVFXを手掛けるなど、ゴジラに対しての想いが強い山崎貴。そんな山崎監督が、ついに映画本編そのものを手掛けた山崎版「ゴジラ」が完成したのだ。

本作は、戦後の復興や経済成長を描いた「三丁目の夕日」シリーズにおけるテーマのひとつでもあった、人間の繋がりやマンパワーの凄さといった要素が「ゴジラ」と繋がるようなメタ的な作品でもある。

「ゴジラ」というと、70年代では子どもたちのヒーロー的存在として描かれることも多かった。または、多数の怪獣や宇宙人を登場させることでダークヒーロー的な立ち位置にさせて、その存在そのものをあやふやにしてきた。

海外ではどちらかというと、東宝が制作した特撮ヒーロー番組「流星人間ゾーン」で完全に正義のヒーローとして扱われていた頃のものや、平成や2000年代の中間的立ち位置の作品が人気。そのためギャレス・エドワーズが監督を務めた『GODZILLA ゴジラ』(2014)から始まったシリーズでも、ゴジラは悪としてではなく、自然界のバランスを見守る守護神のように描かれていたりもする。

そもそも「ゴジラ」というものは、戦後日本が抱えていた「恐怖」や「原爆」の象徴そのもの。とくに今作の場合は「原爆」のメタファーという部分がかなり強調されているといえるのだが、そういったゴジラの本質を描こうとすると、どうしてもファミリー層を諦めなければならない傾向にあるという大きなジレンマがある。

『シン・ゴジラ』(2016)の場合は、敵対させる怪獣を登場させず、ゴジラそのものを恐怖の対象として描いていたという点では、今作と方向性は同じであった。

ゴジラ作品は、シリーズのなかで敵対する怪獣を登場させたり、70年代のシリーズのように人間に飼いならされたり、冒頭から登場させるなど、子どもたちが飽きないように構成されているものが多い。『シン・ゴジラ』の場合もそういった「見せ方」については子どもをある程度意識しており、人間ドラマをモブ的に軽くし、ゴジラの登場時間を多くするなど、バランス上手く描いていた。

しかし今作は、中心にあるのは人間ドラマ。戦争ドラマとしての側面が強く、そのなかでの「ゴジラ」という恐怖を描いたものとなっているため、子どもに媚びた作品には全くなっていないことから、ファミリー層からの支持は難しいように思える。


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