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UPDATE|2023/08/12

【何観る週末シネマ】チョン・ウンチェのナチュラルな演技必見、ある恋人関係の終わりの物語

(C)2023 kt alpha Co., Ltd. All Rights Reserved

この週末、何を観よう……。今週公開の作品の中から、映画ライターのバフィー吉川が推したい1本をピックアップ。おすすめポイントともにご紹介します。今回ご紹介するのは、8月11日(金)より公開されている『もしかしたら私たちは別れたのかもしれない』。気になった方はぜひ劇場へ。

【写真】『もしかしたら私たちは別れたのかもしれない』名シーン

〇ストーリー
美大で出会い、親友から恋人になったジュノ(イ・ドンフィ)とアヨン(チョン・ウンチェ)は人生の大部分を共に過ごしてきた。周りから見れば2人の関係が次の段階に進むのは時間の問題だった。30代を迎え公務員浪人生のジュノを支えるため、有望視されていた美術の道を諦め不動産会社に就職して生計を担うアヨンは、試験勉強もろくにせずバイトや遊びに明け暮れるジュノの怠慢さにとうとう我慢の限界が達し、その場の勢いで2人はケンカ別れをしてしまう。お互いを忘れるべく、アヨンは自分のキャリアを追求し、ジュノは友人のもとで働き始める中、それぞれに新たな出会いが訪れるが...。

〇おすすめポイント
監督・脚本を務めたヒョン・スルの長編監督デビュー作。

学生時代から腐れ縁のような関係が続くふたりの心情の変化と、徐々に終わりに向かう過程、新たな出会いと新たな恋を自然体に描いた大人の恋愛映画ではあるが、全体的に描いていることはシンブルである。

公務員試験に落ち続け、無職状態のジュノを支えるために夢よりも安定を選んだアヨンの関係は、恋人というよりも結婚前からマンネリ夫婦のような状態になってしまっていて、打開策がわからないほどに関係が破綻している。

ケンカ別れしてしまうずっと前から、ふたりの心はすでに別れていたのかもしれないし、それがいつだったかもわからない状態。もはや分岐点も修復点もわからない。

互いの重りになっていることに気付きはじめて、自分にも相手に対しても込み上げるイラ立ちからか、たびたび衝突するふたりを観ていると、復縁させる方向よりも、別れるべきだという方向に感情移入させる特殊な構造の物語となっている。

主人公たちが別れることこそがハッピーエンドだと思わせる作品も珍しいのではないだろうか……。

ナュラルな演技を得意とするチョ・ウンチェが主演を務めていることもあって、繊細な心の揺らぎを見事なまでに表現しているし、美術大学出身だけあって、アーティストの役も板についている。

どちらかといえば主人公はイ・ドンフィが演じるジュノ側で、割とジュノの視点に寄り添った作品かもしれないがチョ・ウンチェが見事なまでに自分の映画にしているといえるだろう。

ちなみにチョ・ウンチェといえば、過去には加瀬亮や歌手のチョン・ジュンイルと不倫報道のあった女優としても知られているが、それらの報道に対しての自虐ネタのような展開もあったりする……。

〇作品情報
監督・脚本:ヒョン・スル
出演:イ・ドンフィ、チョン・ウンチェ、カン・ギル『ベイビー・ブローカー』、チョン・ダウン、コ・ギュピルほか
2023年/韓国/103分/カラー/シネマスコープ/5.1ch
日本語字幕:石井 絹香/レイティング:G
原題:어쩌면 우린 헤어졌는지 모른다/英題:SOMEONE YOU LOVED
配給:クロックワークス
公式サイト: https://klockworx-asia.com/syl/
8月11日(金)シネマート新宿ほか順次公開

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