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UPDATE|2023/07/24

ナナニジ・白沢かなえ、真っ赤なドレスで涙の卒業公演「楽しいアイドル人生でした」

写真提供:ソニー・ミュージックレーベルズ



後半には「空のエメラルド」から「曇り空の向こうは晴れている」へと続き、うつむことなく未来を見つめるまなざしが輝く。白沢から「希望ちゃん」と名付けられる由来となった望月りののセリフが雲間を割く天使の梯子のごとく放たれる。すでに涙をたたえ声を震わせるメンバーもいる中で、力こぶしを出すようなポーズもパワフルな「謎の力」が笑顔を呼び、感情はひとところに留まることを許さない。

さらに超高速千手観音ダンスの「あやふやな世界観」から、ユーロビートの音の渦と楽曲の世界観に身を捧げるがごとく一心不乱に踊り続ける、22/7 白組の「最後のピアノ」へと、限界を超えていく姿が胸に迫る。相川がサディスティックな笑みを浮かべる「聞かせて欲しい」というセリフはさらなる熱気を呼び、白沢の額にまとわりつく髪が、その壮絶さを物語っていた。そして、どこか覚悟をもった面持ちで白沢が伝える。

「次が、最後の曲です」。争いと苦悩の中で凛と咲くジャンヌ・ダルク白沢の美しさを最初に見せつけた曲ともいえる「地下鉄抵抗主義」だ。豊かな表現力とキレの良さを持って踊る白沢の戦いをなぞるように、メンバーたちが一斉に振りを続ける場面は見どころだった。そんな戦う彼女たちにファンも続く、「涙のバリケード」の力で。ラスト、その手に掴んだ〝何か〟をしっかりと凝視しながら力強く握り潰す白沢。それが、自分の心臓であったと感じた人も多いだろう。ともすれば白沢自身もそうだったかもしれないと思うほどに、絶世のパフォーマンスだった。

会場いっぱいにこだまする「かーなえる!」というアンコールの声に応えて登場した白沢は、ティアラも輝く真紅のロングドレス姿だった。白沢は「卒業を撤回できたら、どんなに楽か」というさびしさを抑えながら書いてきた手紙を読む。「22/7に入ったのは、この子に出会うためだった」と思う存在である丸山あかねについて「これからあかねちゃんは声が出せなくなってしまうことだけが苦しい」と、こらえきれない涙とともに「どうか、あかねちゃんを忘れないでください」と最後の願いを伝えた。

そして「やっぱり東京ドームに立ちたかった、国民的アイドルになりたかった。どうせ叶わないだろうなと思ってしまう弱さがあって、目標が言えずにファンの方たちを不安にさせてしまったこと、本当にごめんなさい。それでも、アイドルに対する思いは人一倍強かったです」と、白沢が密かに抱いてた夢と、決して吐露することのなかった弱さをついに打ち明けるのだった。

第二の人生におけるメンバーとの出会いを「宝物」に、ここで培った「勇気と粘り強さ」を持って、第三の人生を真っ直ぐに生きていくという白沢。「見つけてくれて、ありがとう。出会ってくれて、ありがとう。楽しいアイドル人生でした!」と最後にはいつものくしゃっと目がなくなる愛おしい〝かなえるスマイル〟で心からの感謝を届けた。

涙にくれるメンバーたちと歌う「僕は今夜、出て行く」。先輩メンバーたちは次々と白沢に抱きつき、後輩メンバーたちはその背中に向けて腕を伸ばす。すがるのではなく、そっと背中を押すために。ラストナンバー「ヒヤシンス」で、そんなメンバーたちに囲まれるように立つ姿は、これまでに卒業したメンバーたちの思いも大切に温めながら咲いた赤い花そのものだった。

この日の目標が、瞳を潤ませるメンバーたちを見ながらニヤニヤすることだった白沢。「みんな、そんなに泣いてどうしたの?」とメンバーたちをからかって、笑わせた。

止まない「かなえる」コールの中「やり残したことがある」と再びあらわれた白沢は、自分のスマホでファンと一緒に写真を撮る。芸能界を引退し「普通の女の子」に戻るべく階段を登っていく背中は、最後まで美しい。その姿が消えたステージに、メガネを外した同じドレス姿の丸山あかねと並んで微笑む映像が映し出された。

公演中、11月に、今年行われたライブの映像を特典とする2ndアルバムをリリースすことが発表となった。色褪せることのない思い出を抱き、13人もまたさらなる未来への扉を開くのだろう。

CREDIT

文:キツカワトモ


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