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UPDATE|2023/06/11

読み切り制作が話題の『アイシールド21』、天才と凡人を徹底的に描いた熱き名作の魅力

21周年特別読切が公開予定の『アイシールド21』

アメフト漫画『アイシールド21』の作者である村田雄介氏は6月5日、同作の特別読み切り作品『BRAIN×BRAVE』を制作している、とツイートした。この嬉しい報告に「アイシールド21」がトレンド入りするほどの大きな反響が巻き起こり、月日が経ってもいかに同作が愛されていたのかを感じる。“アイシールド21熱”が高まっているが、改めて同作の魅力を記したい。とはいえ、魅力があまりにあり過ぎる作品のため、同作が執拗に描いてきた“才能”を軸に掘り下げる。

【画像】『アイシールド21』21周年特別読切、告知アニメ

 小早川瀬那と進清十郎、蛭魔妖一と金剛阿含など、スポーツ漫画によく見られるライバル関係は同作にも多い。ライバルチームはもちろん、同じポジション、マッチアップするポジション、同じチーム内といったケースと多種多様。そんなライバルストーリーには“才能”がよく絡んでくる。

 高身長ではあるものの身体能力はまずまずの桜庭春人は、チームメイトの進に強いライバル心を燃やす。しかし、生まれ持った身体能力に加え、誰よりも努力する進には遠く及ばない。その差が一向に埋まらないどころか日々差が開くことに焦燥感を覚え、「勤勉な天才に凡人はどうやったら敵うっていうんだ。諦めきれないんだよ!俺だって一流になりたい!凡人に生まれた男はどうしたらいいんだ…!!」と涙を流すシーンは印象的。

 また、双子でありながらも才能には絶望的なまでの違いがある金剛兄弟の対比も見事。天才の阿含を弟に持つ雲水は阿含の才能を認め、そして自分の凡人さを理解しており、プレイスタイルも言動も“分”をわきまえている。進に追いつこうともがく桜庭とは違って“賢い”雲水。実際、桜庭は「俺は雲水みたく現実を冷静に受け入れられるほど賢くない」と雲水を分析している。

 ただ、桜庭同様に熱いものを胸に秘めており、ワールドカップ決勝で進の代役で出場した葉柱ルイの、必死に食らいつく姿勢に触発される。「どうしてこんな処にいる。どうしてあのフィールドで闘っていないんだ。たとえどれだけ恥をかこうとも。たとえどれだけ叶わぬ夢だろうとも」と自身の賢さを恥じて心を改めるシーンは熱い。ワールドカップ決勝は同作の実質ラストゲームだ。伏線回収とはまた違うが、そんな試合でメインとは言い難い雲水が自分の殻を破る姿まで描いた。登場人物全員を大切にした作品だからこそ、根強いファンを獲得したのだろう。
AUTHOR

望月 悠木


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