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UPDATE|2019/06/23

井上咲楽が野田佳彦 元首相に聞く「もう1度総理大臣になりたいと思いますか?」

左から野田佳彦、井上咲楽 撮影/松山勇樹



井上 野田さんは大学を卒業後、NHKと読売新聞から内定をもらっていたと聞きました。

野田 学生時代は政治部の記者になりたいと思っていました。

井上 それがどうして、1期生を募集し始めたばかりの松下政経塾に入ることになったんですか?

野田 ある日、新聞広告を目にしたんですよ。“政治を正さなければ日本はよくならない”といったメッセージと、松下政経塾第1期生募集という。それでパンフレットを取り寄せてみたら、実績がないからすべてイラストで。でもね、ふと応募してみようと思っちゃったんですよね。

井上 でも、今でこそ松下政経塾出身の政治家さんはたくさんいますけど、当時は卒塾したとして政治家になれるかどうかも分からないわけですよね。安定した就職先を蹴るのは不安じゃなかったんですか?

野田 不安はありましたけど、ここに行けば自分も書く側ではなく、実際に何か物事を動かす側になれるチャンスがあるのかな、と。だけど、入塾してみると、「カリキュラムは自分たちで作れ」、「人間を知るには机上ではなく、実際の労働の中から考えるのが良い」という考えのもと、工場や販売店で実習もあれば、サバイバル訓練もあってね。先生が政治を教えてくれるわけじゃない。政経塾の寮室で1人になると、天井を見上げながら「こんなことやっていていいのかな?」と思っていましたね。

井上 辞めようと思ったことは?

野田 当時、松下政経塾は5年制で、入った以上は卒塾しようと決めていました。ただ、22歳で大学を卒業して、27 歳。同級生は就職して5年目でしょう。あの頃は年功序列、終身雇用の時代。みんなは入社した先でコツコツと上がっていく路線を選び、「給料が上がった」「ボーナスが出た」「そろそろ結婚だ」と盛り上がっているわけですよ。だけど、こっちは卒塾したものの、どんな未来になるんだろう? と。別に政治家になれる資格を得られたわけじゃないですからね。

井上 想像しただけで、焦りますね。

野田 焦りもあり、どっこいなんでも生きていけるだろうという思いもあり、葛藤しながら卒塾でしたね。

CREDIT

取材・文/佐口賢作 撮影/松山勇樹


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