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UPDATE|2022/07/16

もはや歌って踊るだけじゃない、ステレオタイプを突き崩すインド映画が世界を席巻する日

『ミッション・マンガル 崖っぷちチームの火星打上げ計画』(C) 2019 FOX STAR STUDIOS A DIVISION OF STAR INDIA PRIVATE LIMITED AND CAPE OF GOOD FILMS LLP, ALL RIGHTS RESERVED.

インド映画と聞いて、まず何を想像するだろうか? 歌って踊る、古臭い、キスシーンがない、顔の濃いおじさんばかり……。もちろんそういった作品がないとは言わないが、それは海外において日本には時代劇や怪獣映画しかないというイメージと同じであり、ごく一部の作品の限られたジャンルでしかない。どうしても日本では、『ムトゥ踊るマハラジャ』(1995)の印象が強く、一部では「ムトゥの呪い」とも言われるほど、日本にインド映画を伝えた一方でインド映画に対して根強いステレオタイプを生み出した。

だが、そもそもインドでは、ヒンディー語の映画は「ボリウッド」、タミル語映画は「コリウッド」、テルグ語映画は「トリウッド」、マラヤーラム語映画は「モリウッド」とも呼ばれ、映画のテイストもジャンルも、宗教性も違った様々な作品が混在していて、実は「インド映画」と一括りにできるようなものではない。

世界に目を向けると、様々なジャンルのインド映画が供給されている。アメリカのDisney+Hotstarでは、『Bhoot Police』(2021)や『Sadak2』(2020)といった、オリジナルのインド映画が世界に向けて配信されており(日本は配信されていない)、6月から日本でも配信されているマーベルの新作ドラマ『ミズ・マーベル』ではポリウッド俳優を積極的に起用し、いたるところにインド映画ネタが散りばめられている。Amazonプライムビデオでも多くのインド映画やドラマが配信され、人気を博している。

近年では、ハリウッドの方もインドに近づいていっている。その背景には中国離れがある。ハリウッド映画は大きな収益を上げる中国市場を視野に入れて作られてきた。だが、『プーと大人になった僕』(2018)で習近平の体系にプーさんが似ていて公開中止になったというのは、ネタのような本当の話で、何が基準で検閲に引っ掛かるかわからない。マーベルの『シャン・チー/テン・リングスの伝説』(2021)、『エターナルズ』(2021)、『ドクター・ストレンジ/マルチバース・オブ・マッドネス』(2022)が続々と公開中止となった。中国市場をあてにしたビジネスには多大なリスクが付きまとうのが現状で、Netflixはすでに中国に見切りをつけて、撤退している。

チャイナマネーを失ったハリウッドにとって、次なるパートナーを探すとなると、自然な流れとしてインドに行き着く。インドの人口は13.8億人、1位の中国(14億人)を急激に追い上げており、2027年までに1位になると予想されている。そもそもアメリカリスペクトの強いインドは、検閲などの厳しさもほとんどない。ハリウッド大作はインドで必ずランキング入りするほど市場もすでに確立している。

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