たしかにキャリア1年半で、団体のてっぺんに挑むのは『まだ早い』と言われても仕方がない。ただ、現在のスターダムは選手層がものすごく厚くなっており、挑戦権を有する選手が何人もいる。おとなしく順番待ちをしていたら、おそらく年内にチャンスは回ってこない。だったら批判覚悟で「10周年」「団体初の日本武道館」という最高の舞台に名乗りをあげるのは間違っていない。まだ誰も手をあげていないタイミングだったこともあって、彼女の主張は団体サイドにも受け入れられた。
ただ、観客に望まれないままで武道館を迎えるのはよろしくない。順番は逆になってしまったけれど、ここから上谷沙弥は挑戦者としての「実績」を残すために奔走する。
2月13日の後楽園ホール大会では元チャンピオンで最強外国人レスラーのビー・プレストリーと時間切れ引き分けの大熱戦を展開。翌14日には4WAYマッチ(4人の選手が同時に闘う)という変則的な試合形式ながら、初公開のスワンダイブ式フランケンシュタイナーで林下詩美から文句なしの3カウントを奪取。その結末と凄技のインパクトに、マスク着用で声援も禁じられている場内が、異様などよめきに包まれた。その後に起きた万雷の拍手は観客からの「挑戦権認定書」だったと思う。