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UPDATE|2020/04/04

処女エッセイが話題のAV女優・戸田真琴が考える優しさと生きづらさ

戸田真琴(撮影:松山勇樹)


──人前に出るようになってSNSなどで発信するようになると戸田さんの考えに反発する人も出てくると思います。

戸田 「偽善者」と言われることはよくありますね。そう言われた時に、実際に偽善的だったら「鋭いな」と思うんですけど、たとえ完全に達成できてなくても、善でありたいと思うこと自体は、決して偽善ではないと思うんです。なので私は偽善者ではなく、「善でありたいと思い続けている人」なのだと思います。

──たしかにおっしゃる通りです。

戸田 ただ、どうして偽善者と思われるんだろうと考えた時に、言葉遣いなどで嘘くさくならないようにすることが大切なのかなと。「大丈夫だよ。あなたと同じ地平にいるよ。同じように汚れているけれど、こう思うんだよ」とアプローチをする方法。私はAV女優でいることで、それをやろうとしているのかなと思うんです。良い意味で、他人から見下される余地がある職業であることを含めて、自分のありたい姿というか。私のことをよく知りもしないで偽善者と言う人は、自分の価値観が、他人に対しても通じるものだと思っているのではないかしら。この世には完全な善人なんていないのだから、お前も偽物に決まっているって決めつけているのかなと。そういう、他人に対する絶望みたいなものを、どこかで崩してあげたいなと思うんですよね。

──分かりあえない人は切り捨てようという思考にはならない?

戸田 実際にね、絶対に切り捨てないというのはなかなかできない。だけれど、できるだけ歩み寄ろうとはしたいです。簡単に見限って、そのままだなんて悲しいじゃないですか。書いている文章に対して、「自分の言葉にならない気持ちを言語化してくれた」と言っていただくことがあるんですけど、やっぱりそれは嬉しくて。

──やはり文章に共感されることはうれしいですか。

戸田 私の文章を読んで「自分のことだな」と思ってもらえる。それって、たまたま言語化できたのが私だっただけで、その思い自体は人の持ち物としてもらっていいんですよ。私が書いた本にしても、何か映画や作品のレビューだったりしても、書かれていることが自分と同じだなって思う瞬間があったら、それはもうその人の言葉としていいと思っています。気持ちの話で。言葉の羅列というただの並びを、たまたま私がちょうどよく組み上げただけ。そういう風に、書き落としていった言葉は好きなように使ってもらいたいですね。読んだ人と一文でも共鳴できるところがあると嬉しいです。


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AUTHOR

猪口 貴裕


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