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UPDATE|2020/03/08

20年という歴史の重みの中で… 新たなモーニング娘。を創る少女たちの苦悩

モーニング娘。年代記 第21回

アイドルは時代の鏡、その時代にもっとも愛されたものが頂点に立ち、頂点に立った者もまた、時代の大きなうねりに翻弄されながら物語を紡いでいく。モーニング娘。の歴史を日本の歴史と重ね合わせながら振り返る。『月刊エンタメ』の人気連載を出張公開。21回目は2016年のお話。


2016年8月に報じられた一連のニュースを思い返すとき。実際の内容よりも自分がそのとき、何をしていたかをつい語りたくなってしまうのは、それらの存在が日々の生活に深く根を下ろしていた、柔らかくも確かな証なのだろう。

2016年8月8日、天皇陛下が生前退位の意向を自ら発表。

2016年8月14日、平成の国民的アイドルグループ・SMAPが年内での解散を発表。

自分自身の体験を語れば、天皇陛下の「おことば」はよく晴れた昼下がりに自宅のテレビで、そしてSMAP解散のニュースは夜もだいぶ深まった自室のパソコンで、かなりの衝撃とともにそれぞれ受け止めたのを覚えている。

しかしその衝撃と同じくらい強く記憶に刻まれているのは、永遠に感じていたものが終わろうとしている中でも、翌朝に昇る太陽はそれまでの昨日と変わらずに、いつも眩しくあり続けていたという事実だ。

時代はどれだけの感懐を私たちに刻み付けようともけして永遠ではなく、止まらぬ時間の中では、あくまでも通過点に過ぎない。昭和最後の日々を記憶していない世代の私は、そこにある儚さを、あの2016年に生まれて初めて実感していたように思う。

そんなことを頭に浮かべていると、『泡沫サタデーナイト!』という楽曲タイトルに感じた胸の高鳴りと切なさも、今になって再び色鮮やかに蘇ってくる。

『泡沫サタデーナイト!』はやはり2016年、当時のモーニング娘。’16がリリースした通算61枚目のシングルであり、そして同時に9期メンバーとして約5年間活動した鈴木香音の卒業ソングにもなっている。

「最後の最後まで笑顔全開、みんな今までありがとう!」(鈴木香音)

EDMサウンドとメンバーカラーの衣装が鮮烈だったYouTubeのミュージックビデオを起点として、再ブレイクの狼煙を上げた『One・Two・Three』の発表から4年。その間にモーニング娘。のCD売上とメディア露出数はどんどん増えていき、グループの快進撃を称えるように、ファンの間では黄金期やプラチナ期に続いて(2012年に発売されたアルバム『(13)カラフルキャラクター』のタイトルから)「カラフル期」という愛称も誕生していた。

AUTHOR

乗田 綾子


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