グループの歌唱面を長年に渡って支えていた田中の卒業は、まず加入から2年が過ぎようとしていた9期10期メンバーに、強い危機感とモーニング娘。としての自覚を急激に芽生えさせていった。それまで幼さが目立っていた彼女たちのパフォーマンスはちょうど田中の卒業発表時期から、急成長を遂げていくことになる。
「優樹、歌詞の意味とかあんまり深く考えたことがなかったんです。田中さんが抜けてから、歌詞を考えるようになって」(佐藤優樹)(※3)
また田中の卒業を見据えながら開催していた新メンバーオーディションを通じ、11期メンバー・小田さくらを迎えたことも大きな転機になった。なぜなら田中に匹敵する高い歌唱力の持ち主であり、なおかつ粘り気のある声質が特徴的だった小田の加入で、若いモーニング娘。はグループの原点ともいえる歌謡テイストのメロディを、もう一度楽曲へ組み入れることが可能になったのだ。
「これは不思議なんですけど、鞘師、石田だけでは出来なかったことが、小田がいることによって出来た。それで小田がいてくれることで、譜久村が活躍する場所が出来てくるんです」(つんく♂)(※2)
こうして残る道重へ、そして自身を育ててくれたモーニング娘。へ。6期メンバー・田中れいなの決断がもたらした“物語の続き”は、やがて『Help me!!』や『ブレインストーミング/君さえ居れば何も要らない』というシングルを生みだし、これらの作品はグループに11年ぶりの2作連続オリコン1位ももたらすことになる。
直後の2013年5月21日、田中は予定通りにモーニング娘。としての活動を終えることになるが、もしこの先に待っていたモーニング娘。のさらなるストーリーを、道重と田中が少し早く知れていたなら、2人は一体どんな表情で喜びを表していたのだろうか。
オリコン2作連続1位を追い風に2013年8月23日、モーニング娘。はついに『ミュージックステーション』(テレビ朝日系)に6年ぶりの単独出演を果たす。その中の紹介VTRにはこんなキーワードが、画面一杯に表示されていた。
「モーニング娘。ブーム再来」
※1 竹書房『Top Yell+ ハロプロ総集編 Hello!Project 2012』
※2 ワニブックス『モーニング娘。 20周年記念オフィシャルブック』
※3 音楽出版社『「ハロプロ スッペシャ~ル」~ハロー!プロジェクト×CDジャーナルの全インタビューを集めちゃいました!~』