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UPDATE|2019/11/30

人生に詰んだアラサーの元アイドルが赤の他人のおっさんと共同生活をした結果

著書の大木亜希子さん 撮影/松山勇樹

「人生に詰んだ元アイドルは、赤の他人のおっさんと住む選択をした」、そんな衝撃的なタイトルの小説が11月30日(土)に発売となる。著者はアイドルグループSDN48の元メンバーで、現在はライターして活躍する大木亜希子さん。本は大木さん自身の経験をベースにした私小説だ。


28歳の春、地下鉄のホームでパニック障害のような症状を発症させた“大木亜希子”は、ひょんなきっかけから見ず知らずの56歳のおっさん・ササポンと共同生活を始めることとなる。仕事も彼氏も貯蓄もない元アイドルは、ササポンとの奇妙な生活を通して、失った何かを取り戻していく……。「半分ノイローゼになりながら書いた」という著者の大木亜希子さんに話を聞いた。

     *     *     *

──まずは大木さんの歩みを簡単に説明していただけたらと思います。「元SDN48のメンバー」として知っている人が多いはずですが、それ以外も多岐に渡って活動されてきました。

大木 もともと私は15歳のときに女優としてデビューしたんです。いわゆるティーンアイドルですよね。大手事務所に所属していたものの、実力が追いつかずにもがき苦しむ日々でした。一応、バーターで連ドラに出たりもしたんです。でも、泣かず飛ばず。学校は日出高校の芸能コースで、周囲は華やかな世界に羽ばたいていく中、自分はどうしたものだろうと途方に暮れていました。それで20歳になったとき、「これが最後のチャンスだ」と思って受けたのがSDN48でした。ところがこのSDN48もわずか2年半で解散してしまい、そこからはパッとしない地下アイドルをやったりして……。結局、私は芸能以外のことを知らなかったんです。子供の頃から、それしかしていなかったわけですから。それで25歳のときに意を決して会社員になったんです。

──久しぶりに一般人へ戻ったわけですね。

大木 そこでは芸能界とは別の苦労が待っていました。その頃の私はハイスペ男子とつき合いたいと考えていたんですよ。だけど、どうしても恋愛で失敗してしまう……。芸能のステージを降りたら、今度はひとりの一般女性としてキラキラしたいという思いがあったんですけど、結局、ここでも生き急ぐような性分は変わらなかった。そして疲弊していく毎日。それであるとき、コップから水が溢れるようにして自分の心が爆発してしまったんです。突然、駅で足が動かなくなってしまいましたから。いわゆるパニック障害のようなものですよね。完全に自分の人生は詰んだなと思いました。そのときの貯金は10万円と本の中で書きましたが、実際は10万円を切っていたはずです。

──文字通り、どん底を味わったと。

大木 そこで、ひょんなことからササポンという56歳のおっさんと同居することになるんです。するとササポンの置きにいくような優しさに包まれ、どんどん自分の欲望とか執念が削ぎ落されていくのが実感できた。こうした一連のことを今だったら出せるかなと思って書いたのが、今回の本のベースになっています。

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