ステージの模様がYouTubeにアップされると、まず既存のモーニング娘。ファンたちが一斉に反応し、驚きの声を挙げた。なぜならそこには、ファンの想像をも越えた「新たなモーニング娘。の姿」が見事な形で存在していたからだ。
前作でのトライ&エラーで得た知見を元に、つんく♂は記念すべき50枚目のシングル作として予定されていた『One・Two・Three』で、なんとモーニング娘。の楽曲構造そのものを変えるという大勝負に出た。歌メロをほぼ動かさず、サビもギリギリのところで歌い上げさせないという、J-POPの黄金パターンをあえて自ら封じる手法である。
「デモテープだけ聴いたら“なんじゃこの曲”って思うと思います」(つんく♂)(※3)
しかしこの“我慢の美学”こそが続けて採用したEDMの目新しさと合わせ、結果的に新生モーニング娘。の魅力を引き立てた。そしてインターネットが着火点となったその反響は、次第に既存ファンを越え、ブームの中でアイドルへのアンテナを立てていた人々の元にも「今のモー娘。ってこうなってるんだ」という驚きとともに広がっていったのである。
最高の追い風を受けた2012年7月のリリースシングル『One・Two・Three』は、モーニング娘。にとって、なんと丸10年ぶりに売上が10万枚を越えるヒット作となった。
そして再び注目を集め始めたグループはというと、相変わらずメディア露出には恵まれなかったものの、YouTubeでの再生回数や、握手会へ通うファンの数が目に見えて増えていくことになる。
「『LOVEマシーン』や『ザ☆ピ~ス』の頃が黄金期と言われていたけど、黄金期はこれからまた私達が作るんだ」(道重さゆみ)(※1)
長いトンネルの先でモーニング娘。がついに掴んだ、復活の兆し。
それはどんな苦難の中でも決して未来を諦めなかったグループにとって、新たな時代を生き始めたニッポンの今に、もう一度自分たちが重なる。そんな結成14年目の必然の奇跡も意味していた。
※1 ワニブックス『モーニング娘。 20周年記念オフィシャルブック』
※2 9~11期メンバー&つんく♂が語る2013年の『モーニング娘。』(音楽ナタリー)
※3 NHK BSプレミアム『モーニング娘。まるっと 20年スペシャル!』(2018年3月31日放送)