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UPDATE|2019/10/25

乳がんと闘う矢方美紀(元SKE48)「最初はがんになった自分を受け入れられなかった」[インタビュー]

矢方美紀 撮影/松山勇樹


──最近のプライベートの話もお聞きしたいのですが、以前インタビューで、片思いの男性について書かれていましたが。その後の進展は?

矢方 かなり前のインタビューですよね。進展はなにもないですよ(笑)。一人暮しは継続中です。

──将来的には結婚について考えたりは?

矢方 結婚はしたいですけど、自分は病気をしているので受け入れられるのかなっていう部分は悩みです。治療中は妊娠できないというのもあります。治療が終わるか、一旦、休止するかしか方法はないんです。でも、休止をするとその間薬を飲んでいないので、再発してしまわないかという不安もある。中には治療前に卵子凍結を選択される方もいらっしゃるんですが、私はその選択はしていないので。私の場合は残り約9年間の治療が終わってその後に生理が来るか来ないか、それは人によるんです。そういう不安も長く感じないといけないんですが、治療後に妊娠できる確率は0%ではないので。

──病気の前後で人生に対する考え方も大きく変化したことと思います。

矢方 人生について考えることは増えましたね。病気が分かるまでは、自分は死なないって、このまま何の病気もなく不死身だって思っていたんです。でも、実際がんになって、大丈夫っていう保証はどこにもないんだなっていうことを知りました。当時は、「がん=死」というイメージがあったので、それに自分がなってしまったという事実を受け入れることができなかったんです。まだやりたいことがあるし死にたくないと思ったんです。でも、この1年、治療をしたり、人と会って話したりして、人って生まれたら死ぬものだなって思ったんです。それからは、来年もし「あと余命1カ月です」って言われたら、「あの子あと1カ月しか生きられないんだ、かわいそう」って思われるよりは、その1カ月を後悔ないように楽しく生きた方がいいんじゃないかって思うようになりました。今までは若くして死にたくないしやりたいことをやりたいって思っていたんですけど、やりたいことって人によって違うし、それぞれの人生において出会う人も違う。私には、私にしかできない素敵な出会いがこの1年であって、その中で感じることもたくさんあったので、それでいいかなって思ったんです。

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現在は名古屋の養成所でレッスンを受けながら、夢である声優を目指しており、2021年度はアニメ『シキザクラ』(中京テレビ)への出演も決定している。

「今は顔を見て“矢方さん”と言ってもらえるけど、声だけでも“矢方さん”と言ってもらえるようになりたいんです」

アイドル時代、持ち前の明るさで楽屋を笑いに包んできた矢方美紀。卒業後、新たに見つけたその夢に、あの頃と変わらぬ笑顔で突き進んでいる。
AUTHOR

林 将勝


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