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UPDATE|2019/10/18

「アイドルの持つ力を信じて」モーニング娘。から高橋愛が飛び立った日

モーニング娘。年代記 第16回



つんく♂自身もかつてはロックバンド・シャ乱Qのボーカルとして、同じ平成の大災害である阪神・淡路大震災を経験している。彼によればバンドの代表曲となった『シングルベッド』のヒットも、その始まりには震災に向き合う人々の隠れた苦悩が関係していたのだという。

「思い返せば、『シングルベッド』が売れたのも阪神・淡路大震災の後からなんです。リリースはその前からしてたんですが、震災までは、100位以下のチャート圏外の時期もあったんです。でも震災以降、ジリジリ動いていくんですね。ラジオや有線でかかりまくるんです。世の中を応援しながら、世の中に応援されていました」(つんく♂)※4

世の中を応援しながら、世の中に応援される。ここでもう一度モーニング娘。というエンターテインメントの歩みに視点を戻すと、1995年の阪神・淡路大震災の後に誕生したグループにとってこの2011年は、世の中から過去最大に「相互応援」という形のコミュニケーションを求められた、まさにそんなタイミングだったのかもしれない。

さらにその事情を踏まえると、異例の同年加入となった9期(譜久村聖、生田衣梨奈、鞘師里保、鈴木香音)と10期(飯窪春菜、石田亜佑美、佐藤優樹、工藤遥)は、震災前加入の前者が「新時代のスタート」、震災後加入の後者が「相互応援の活性化」と、求められていた刺激のエッセンスが微妙に違っていたことにも、だんだんと気づかされてくるのだ。

そしてこの2011年。激動の日本と呼応するように次々と刻まれていった結成14年目のアイドルグループの変革は、5期メンバー・高橋愛の卒業をもって、クライマックスを迎えることになる。

「“今の自分達でいいのかな?”と思うこともあるかもしれないけど、自分を信じて進んでもらいたい」 (高橋愛)※5

10年に及ぶ活動で栄光も挫折もすべて経験した6代目リーダー。社会が深い悲しみに襲われた2011年、彼女もまた心を痛めながら、それでも最後にはアイドルの持つ力を信じて、愛する後輩たちにグループの明日を託すこととなった。



※1 「河北新報」2018年3月9日
※2 「東北が私の頑張る理由だった」被災地支援の顔だった元AKB48岩田華怜の葛藤(BuzzFeedNews)
※3 【2013年HOPE美女】気仙沼で活躍する小学生アイドル・佐々木莉佳子(SCK GIRLS)(週プレNEWS)
※4 NHK BSプレミアム『モーニング娘。まるっと 20年スペシャル!』2018年3月31日
※5 ワニブックス「モーニング娘。 20周年記念オフィシャルブック」
AUTHOR

乗田 綾子


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