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UPDATE|2019/10/18

「アイドルの持つ力を信じて」モーニング娘。から高橋愛が飛び立った日

モーニング娘。年代記 第16回



実はこの2011年というのは、モーニング娘。はもちろん、女性アイドルそのものにとっても、非常にエポックメイキングな1年になっている。それはあの震災の後から従来の憧れだけでなく、社会貢献を目的としてアイドルになろうとする少女たちが確実に増えたからだ。

例えば2011年4月、AKB48のメンバーとしてアイドルデビューすることになった岩田華怜も、その進路選択には東日本大震災が大きく影響していたと語る。岩田はAKB48の研究生オーディションに仮合格した約3週間後に、宮城県仙台市の自宅マンションで被災。地震の影響で家族とともに厳しい避難生活を送ることになった彼女は、華やかなステージへ上がることを一度は諦めながらも、母親からかけられたこの一言で、アイドルとして生きていく強い決意を固めたのだという。

「AKBになって故郷に戻れば力になるのでは」※2

また2011年11月から宮城県気仙沼市のローカルアイドルグループで活動を始め、2015年にハロー!プロジェクトのアンジュルム3期メンバーとしてメジャーデビューすることになる佐々木莉佳子も、アイドルになった最初のきっかけは、東日本大震災にあったと複数のインタビューで話している。しかも佐々木の場合は震災時、津波によって気仙沼市内にあった自宅を失ってしまってもいるのだ。被災時まだ9歳だった佐々木にとって、笑顔溢れるアイドルは、傷ついた故郷のため、そして何より傷ついた自分自身を励ますためにどうしても必要な存在だったという。

「みんなが元気になるように一生懸命歌っていると、たくさんの声援が返ってきて、それを聞くと私も元気になれる」(佐々木莉佳子)※3

東日本大震災で被災した少女たちが自然とアイドルに重ねていた、勇気や元気の力。これらはプロデューサーのつんく♂が後に2011年の女性アイドルシーンを分析して話した「世の中が暗いときほど、世の中は愛に飢え、笑いに飢え、感動に飢える」という内容とも、どこかリンクしているように感じる。

AUTHOR

乗田 綾子


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