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UPDATE|2023/05/11

有村昆がお悩みを映画で解決!ブラック企業で疲弊する47歳男性、辞めたいが再就職が不安

有村昆 撮影:松山勇樹

映画コメンテーターの有村昆が、読者からのお悩みにあわせて、オススメ映画を紹介するシリーズ企画「映画お悩み処方箋」がスタート!第1回目の今回は、ブラック企業で働く47歳男性からのお悩みが到着。八方塞がりな状況を前向きに導く、処方箋のような作品をご紹介します。アリコンがレコメンドした意外な2作とは…?

【関連写真】『エブリシング・エブリウェア・オール・アット・ワンス』場面写真

▽相談
ブラック気味の会社で働いています。毎日朝から深夜まで働かなければならず、健康診断に行く暇もありません。土日は疲れ果てて寝てしまい、無駄に過ごしています。まわりからは「適当にサボったら?」と言われるのですが、性格的にそんな器用に振る舞えません。バレて怒られるのも怖いです。もちろん会社を辞めたい気持ちはありますが、現在50歳手前で、今から正社員として再就職できるのか…。また、日々忙しすぎて転職のことなんて、まともに考えられません。辞めたらいいのはわかっていますが、何十年と同じ会社に勤めてきたので、新しい環境に踏み出すのが怖いという気持ちもあります。どうしたらいいでしょうか。(47歳・男性・会社員)


これはいわゆる「茹でガエル」状態ですね。ずっと同じ会社の中にいて、同じような仕事をしていて、身動きが取れなくなっているのではないでしょうか。カエルが入ってる水を少しずつ温めていっても気づかず、いつのまにか茹で上がってしまうというやつですね。

この相談者の方のように、同じ会社にずっといると、そこがおかしい環境なのかどうかも気づかないことってあると思うんです。

そんな行き詰まった状況をストレートに描いた映画が、2009年に公開された『ブラック会社に勤めてるんだが、もう俺は限界かもしれない』という作品です。

これは元々はネット掲示板の「2ちゃんねる」の書き込みから派生した書籍が原作で、監督は『キサラギ』や、最近では『名も無き世界のエンドロール』を撮った佐藤祐市さんで、主演は小池徹平さん。

高校中退のニート男性が、小さなIT会社に就職したらブラック会社で、サービス残業や徹夜が当たり前の世界だった。「お前やっとけよ」みたいな仕事の押しつけも多いし、モラハラも横行している。でも、彼にとってみたら、この会社を辞めたら、もう2度と再就職ができないという恐怖があるわけです。それを考えると、他の社員が帰っても寝ないで仕事をしてしまう。

この作品は実際の声を元にしているだけあって、かなりリアルな事例が描かれているんですよね。

それを、この相談者さんが観たら「自分もこうなんだ」と客観視できる。映画を観るということには、そういう効果もあると思うんですよ。

ブラック企業に限らず、ハラスメントとかDVの問題も、それが日常茶飯事になってしまうと慣れてしまって、判断がバグってしまう。カエルで例えれば、まずはいまの温度をちゃんと感じるということが大事なんですね。

そしてもう1本は、『エブリシング・エブリウェア・オール・アット・ワンス』をお出しします。今年度のアカデミー賞で作品賞を含む7部門を受賞するという快挙を成し遂げた作品です。

ストーリーは映画を観ていただくのが一番なんですが、ミシェル・ヨーが演じる、コインランドリーを経営するエブリンという女性が主人公。来る日も来る日もタチの悪い客を相手にしていて、生活に疲れきっている。ある意味、ブラック企業のようなもので、 儲からないけど、終わらない作業をずっとやっているよう。さらに娘や家族との問題も抱えている。そんなどうにもならない日常に、この作品では「多次元宇宙」、いわゆるマルチバースという概念が入ってくるんです。

自分がコインランドリーを経営していない世界では、歌手になっていたかもしれない。カンフーマスターかもしれないし、手がソーセージみたいになっていたかもしれない。

そんな多様なパラレルワールドを巡ってどんどんすごい展開になっていくんですが、重要なことは、“いまここにいる自分とは違う宇宙が存在している”という考え方ですよね。


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