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UPDATE|2023/02/03

【何観る週末シネマ】名匠フランソワ・オゾン待望の最新作は、安楽死を願う父と戸惑う娘たちの感動物語

(C)2020 MANDARIN PRODUCTION – FOZ – France 2 CINEMA – PLAYTIME PRODUCTION – SCOPE PICTURES

この週末、何を観よう……。今週公開の作品の中から、映画ライターのバフィー吉川が推したい1本をピックアップ。おすすめポイントともにご紹介します。今回ご紹介するのは、2 月 3日(金)より公開されている名匠フランソワ・オゾンの最新作『すべてうまくいきますように』。気になった方はぜひ劇場へ。

【写真】名匠フランソワ・オゾン『すべてうまくいきますように』場面写真【4点】

〇ストーリー
小説家のエマニュエルは、85歳の父アンドレが脳卒中で倒れたという報せを受け病院へと駆けつける。意識を取り戻した父は、身体の自由がきかないという現実が受け入れられず、人生を終わらせるのを手伝ってほしいとエマニュエルに頼む。一方で、リハビリが功を奏し日に日に回復する父は、孫の発表会やお気に入りのレストランへ出かけ、生きる喜びを取り戻したかのように見えた。だが、父はまるで楽しい旅行の日を決めるかのように、娘たちにその日を告げる……。

〇おすすめポイント
年間映画制作本数が300~400本のフランスではあるが、日本に輸入されてくるのは、ごくごく一部。そんな環境の中でもフランソワ・オゾンは日本では優遇されている監督のひとりだ。

『まぼろし』(2000)や『8人の女たち』(2002)、『スイミング・プール』(2003)といった作品が日本におけるミニシアターブームに直面していたことも要因として大きいのかもしれないが、今でも定期的に新作がそれほどタイムラグのない状態で輸入されている。

オゾンといえば、アートとドラマの中間を行くような劇映画やドキュメンタリー作家として知られててるが、その中で多く語られるのがオゾン自身のマイノリティでもある同性愛について。その次に語られるのは「死」に対しての向き合い方だ。

直接的なものでいうと『ぼくを葬る』(2005)がそうだが、エイダン・チェンバースの小説「おれの墓で踊れ」を原作に自伝的物語として描いた『Summer of 85』(2020)も「死」に対して向き合う物語であった。

今作も「死」に対しての向き合い方が描かれているが、全体的なトーンは暗いものではない。『Summer of 85』で自分自身のルーツを探求したオゾンの新たな路線というべきか、オゾンらしいテーマでありつつも新しい試みも多く取り入れられているように感じられる。コメディ色が割と強いものになっているのもそのひとつだ。

決して良い父ではなかった身勝手な父の安楽死を手伝うことになり、死んで欲しくないという気持ちと並行して、父親の願いを叶えてあげたいという気持ちが同居したような状態に陥る娘たち。

しかし、すぐに亡くなる状態でもなかったりする。しばらくは生きていれるかもしれないが、介護が必要。娘たちには、それぞれに生活がある。現実を見た場合、父親の言う通りにした方がいいのではないだろうか……。そんなことを考えてしまう自分も嫌だ。そんな複雑な気持ちが交差し交わり合う人間ドラマだ。

人生にとって終わりであるはずの「死」というものは、皮肉なことに離れ離れになっていたものを再生させるものでもある。それを意識のあるうちに目の当たりにした男が何を想うのか。そして娘たちは、そんな父の願いにどう折り合いつけるのか……。

〇作品情報
監督・脚本:フランソワ・オゾン
出演:ソフィー・マルソー、アンドレ・デュソリエ、ジェラルディーヌ・ペラス、シャーロット・ランプリング、ハンナ・シグラ、エリック・カラヴァカ、グレゴリー・ガドゥボワほか
2021│フランス・ベルギー│フランス語・ドイツ語・英語│113分│カラー│アメリカンビスタ│5.1ch│字幕翻訳:松浦美奈│映倫区分:G
提供:木下グループ 配給:キノフィルムズ 
公式HP:ewf-movie.jp
2 月 3 日(金) ヒューマントラストシネマ有楽町、新宿武蔵野館、Bunkamura ル・シネマ 他公開

(C)2020 MANDARIN PRODUCTION – FOZ – France 2 CINEMA – PLAYTIME PRODUCTION – SCOPE PICTURES

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