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UPDATE|2019/05/06

「鞘師さんが卒業した時に気づいた歌の本当の難しさ」モーニング娘。小田さくら

撮影/市村円香



──その勘違いが修正されるようになったきっかけはあるんですか?

小田 鞘師(里保)さんが卒業したことが自分の中ではすごく大きかったです。実は鞘師さんってシングルのコーラスをずっとやっていたんですね。鞘師さんがいなくなった次のシングル……つまり『泡沫サタデーナイト!/The Vision/Tokyoという片隅』から私がコーラスをやるようになったんですよ。それでコーラスをやると、インストをすごく集中して聴くようになるんです。コーラスの声が少しでもリズムからズレていると、その曲自体が台なしになるということに気づいたので。ドラ ムやベースを聴きながら、そこと1ミリもズレないように声を重ねていくという作業が大事なんです。

──なるほど。リズムの重要性を思い知ったわけですね。

小田 「何で鞘師さんは、いつも難しいパートを歌わせてもらえるの?」という疑問が自分の中にあったんですけど、答えを言うとリズムが完璧だから。なにせダンスがあれだけ上手い人だから、インストを聴く能力が異常に高いんです。でも、それこそがつんく♂さんの求める歌い手なんですよね。それに加えて鞘師さんの歌は熱かったと思います。普段はのほほんとしてゆるい感じなのに、歌になると急にストイックな鋭さが出てきて。

──今後のことをお伺いします。モーニング娘。はズバリ何を目指していきたいですか?

小田 時代は常に変わっているじゃないですか。テレビに出たからみんなに知ってもらえるというわけでもないし、CDだってあまり買わなくなっている。そういう中で有名な歌番組に出たりとか、オリコン1位を獲ることがゴールになるとは到底思えないんですよ。ましてや今はこうしている間にもコンピューターやAIがすごいスピードで進化しているわけじゃないですか。人間が嫌がるような仕事は全部ロボットがやることになると思うんです。

──ロボットが人間を凌駕するのも時間の問題でしょうね。

小田 私もそう思います。その頃には完璧なピッチで歌いこなすロボットも出てくるでしょうし。じゃあ人間はどうするかっていうと、ロボットが持っていない人間らしさを打ち出していくしかない。泥臭さ、暑苦しさ、剥き出しの感情……。人って他人とまったく同じことができないじゃないですか。その人はその人でしかないんですよ。そういう人間らしさを歌に込めてパフォーマンスできるグループになれたらいいなって思うんです。どんなに完璧なロボット社会になっても、やっぱり女の子が歌うっていう文化は消えてほしくないですし。ちょっと話が壮大すぎますかね(笑)。でも私、本気でそう考えているんですよ。

(『OVERTURE』018号掲載)

▽小田さくら(おだ・さくら)
1999年3月12日生まれ、神奈川県出身。A型。11期メンバーとして2012年9月14日にモーニング娘。に単独加入。
CREDIT

取材・文/小野田衛 撮影/市村円香


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