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UPDATE|2022/12/08

『silent』第8話 悲しい別れが考えさせる“すれ違いの善意と偽善”、そして想いを伝えることの難しさ

ドラマ『silent』より 提供◎フジテレビ

大切な人に自分の想いを伝えようとして、すれ違ってしまった経験はあるだろうか。毎話、視聴者を感動の渦に巻き込んでいるドラマ『silent』(フジテレビ)、第8話はそんな“想いのすれ違い”について深く考えさせられる内容だった。(以下、ドラマ『silent』第8話のネタバレを含みます)

【写真】切ないストーリーが話題に、ドラマ『silent』場面カット【3点】

大学時代、ボランティアを通じて奈々(夏帆)と出会った春尾(風間俊介)。当初は就職活動に有利だという理由で始めたボランティアだったが、奈々との出会いが春尾を変えた。春尾は奈々と話したいと思い手話を覚え、「喜ばせたい、役に立ちたい、少しでも生きやすい世の中になってほしい」と本気で思うようになり、大学の仲間と手話サークルを立ち上げようとする。

だが、学食で仲間に手話を教えている春尾を見つけた奈々は「遊び道具みたいにされてて不快だ」と感じてしまう。「みんな善意でやってることだよ」と話す春尾に、「善意は押しつけられたら偽善なの」と怒る奈々。思わず春尾も「めんどくさいな」と言ってしまい、2人はそれ以来会わなくなってしまった。

相手を想いながらもすれ違ってしまった2人。春尾のナレーション「言葉は通じるようになったのに、顔を見て話せるようになったのに、押しつけた善意で終わった」が深く胸にしみる。どんなに相手を想っていても、真意を伝えるのは難しいということを痛感させられるシーンだった。

一方、想(目黒蓮)と紬(川口春奈)の2人。あるデートの日、「一緒にいるの大変でしょ」「手話で話すの疲れるでしょ」「ごめんね」と申し訳なさそうに繰り返す想に、紬はどう返せばいいのか戸惑ってしまう。

その後、父の命日に実家へ帰った紬は母・和泉(森口瑤子)と入院中の父とのエピソードに自分たちの姿を重ねる。

大変だろうから、迷惑かけたくないから毎日お見舞いに来なくていいと話していた父。母はお父さんのために行っていたわけじゃないと言う。「いたくているだけなのにね。伝わんないよね」と話す母に深く頷く紬。「一緒にいたくていただけ」「手話だって話したくて覚えただけ」紬のその想いもまた、想には伝わっていない。

翌日、実家から帰る際、プラスチック容器に詰めたオカズを紙袋に詰めてくれる母・和泉。「実家から帰ると荷物が増える現象、そろそろ名前が欲しいわ」とつぶやく紬に、和泉は言う。「親の真心」「言葉じゃ伝えきれないからさ、物にたくすの」。人と人との間には、言葉では伝えきれないほど深い想いも存在する。

実家から帰った紬はマンションで想と食事をともにする。容器からお皿に移した“親の真心”を2人で味わいながら紬は想に話しかける。「私ね、いたくているだけだからね」「何かしてあげようって思って一緒にいるんじゃないから」「佐倉君が私と一緒にいるのが大変とか、迷惑とか、疲れるとかそういうのあったら言って。私はないから。今後もしあったら言うから。その時はちゃんと言うから」。微笑んで「分かった」と頷いた想。紬の気持ちが想に伝わった瞬間だった。

言葉で伝えたいのに伝わらない想い、言葉では伝えきれない想い、そして言葉で伝えたい想い……様々な想いが数々の名言とともに描かれた第8話。想いを伝えることの難しさ、そして大切さを深く考えさせられた回だった。

感涙必至の次回、紬に背中を押され、実家に帰ってきた想は、母・律子に何を伝えるのだろうか。

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AUTHOR

宮城 杏


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