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UPDATE|2019/03/18

「まだ見ぬ自分へ」乃木坂46 衛藤美彩の終わりなき道程

『衛藤美紗写真集 話を聞こうか。』(講談社)


この頃、個人的に印象に残っているのは、2016年1月25日のガムロックフェス(日本武道館)でのMCだ。ライブ中に音声トラブルが起きたのだが、「音が切れちゃったじゃないですか。指原さんが乗り込んでくるんじゃないかと思って、いい感じの緊張感で盛り上がりました!」と音声トラブルを上手く笑いに変えてみせたのが衛藤だった。本人は「言わないほうがよかったのかな」とも思ったそうだが、楽屋に戻るとスタッフから感謝されたという。

盟友であった深川麻衣の卒業(2016年3月23日)後、前向きになれなかった時期もあったようだが、決められた場所で仕事をまっとうしたうえで流れに身を任せるようになると、17枚目シングル『インフルエンサー』(2017年3月22日発売)で再びフロントに選ばれた。

「今回はフロントに選んでいただいたけど、どのポジションにいても自分を出すだけ。ある意味、自分のことしか考えてなのかもしれません。求められた場所で頑張ることには変わりない。ただ、自分の出し加減は空気を読みながら変えていくというか、自然と変わっていくと思います」(『EX大衆』2017年3月号)

2017年10月28日、衛藤は高熱を出して握手会を欠席してしまう。「卒業するまで握手会を休まない」と心に決めていた衛藤は号泣してしまうが、この一件でさらに自然体で活動できるようになったという。

「泣いた後は脱力して動けなくなって。でも、翌日から肩の力を抜いて活動できるようになりました。それまでは休んだら価値のない人間だと思い込んでいたけど、『休んでもいいんだよ』と自分に言ってあげられるようになったんです」(『EX大衆』2018年5月号)

生田絵梨花と桜井玲香とのユニットで歌った『雲になればいい』(『シンクロニシティ』収録)の「心を軽くして なるようにしかならない」という歌詞は、彼女の心境を表しているようだった。気がつくと、「アイドル・衛藤美彩」よりも「人間・衛藤美彩」の魅力が増していた。

昨年は5月にヤフオクドームで行われたソフトバンク-日本ハム戦の始球式に登板し、8月にはレギュラーモデルを務める『美人百花』の表紙を飾り、今年4月9日から上演されるミュージカル『笑う男 The Eternal Love -永遠の愛-』のキャストに選ばれるなど、衛藤は次々と自身の夢を実現させていった。

2019年2月14日、衛藤美彩の卒業が発表された。ブログには「これから先もっともっと 自分の見たことない自分にも出会いたい」と前向きなメッセージが綴られていた。「乃木坂46の衛藤美彩」にとって最後のイベントは、3月19日に両国国技館で開催されるソロコンサートだ。

『別冊カドカワ 総力特集 乃木坂46 vol.04』のインタビューで「私は何がしたいんだろうと考えた時、頭に浮かぶのは『歌いたい』ということなんです」「ライブで生の声を届けたい。ずっと思っていたことなんですけど、これからは発信していきたいと思ってます。やっぱり歌うことが好きだから」と語っていた彼女らしいイベントになることだろう。

8年前に「歌手になりたい」という強い覚悟で大分県から上京した衛藤美彩は、その想いを成就させてグループから離れる。卒業後の彼女にはもう「物語」は必要ない。乃木坂46で培った歌とダンス、演技に加え、女性としてのナチュラルな魅力を携えて新しい道へと歩む。


えとう・みさ
1993年1月4日生まれ、大分県出身。AB型。163センチ。ニックネームは「みさみさ」「みさ先輩」。『美人百花』レギュラーモデル。2011年乃木坂46 1期生オーディションに合格し乃木坂46入り。2013年11月27日発売の7thシングル『バレッタ』で初選抜。2015年8月31日発売の13thシングル『今、話したい誰かがいる』で初のフロントポジションに選ばれる。3月31日に開催される全国握手会をもって乃木坂46を卒業する。

乃木坂46 衛藤美彩 卒業ソロコンサート
会場:両国国技館
日時:3月19日(火)18:30開演

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