──爪さんによってもたらされた別の視点が、励みになったんですね。それぞれ別の視点があることは、異性の友人だということが関係していると思いますか。鳥飼 女の人って、女友達と「老後は一緒に住もう」とか約束したりするじゃないですか。これは偏見なんですけど、女性は同性の友達といい感じに頼り合うけど、男の人は、あんまりしないと思っていて。だから男性は潰れやすいし、将来の不安や弱みを、すべて身近な女に押し付けてくるから、女はいつもヒーヒー言ってるって思ってたんです。でも爪さんがそう助けあいみたいなことを、男友達としてるって話を聞いて驚いた。
爪 ああ、漫画家のたかたけしさんとか、仲の良いおっさんたちと、頻繁に生存確認LINEをしあうことにしていて。パソコンのパスワードも教えてあって、「この中のファイルは好きにしてくれていい」とか「この原稿は絶対に未発表にして欲しい」とかって自分が死んだときのための指示書も書いてある。
鳥飼 わたし、そういう話って初めて聞いて。男の人ってそんなことできるんだって。女性は「何かの時は、あの人に頼って、この人に頼って。だから普段からなんてことない会話を重ねたり、気にかけ合って出来るだけのことを返そう」って信頼を組み上げていくけれど、男の人って仕事の結果とか、そういうこと以外で、地道に信頼を積み重ねあうことも、あるんだって初めて知って。でもやっぱり珍しいことなんじゃないのかな、とくに同世代だと。だから、爪さんの友情の作り方っていうのは、私の偏見でいう「男・女」を超えてるのかもなって。
──なるほど。“男と女の友情”に固執する間は、互いに男と女という枠にとらわれているってことでもありますね。最後に、友情を成立させるために、必要なものってなんだと思いますか。爪 お互いに、お互いの陣地があることを認識してること。だから安心してしゃべれる。鳥飼には鳥飼茜ってジャンルがあるじゃないですか。そこには踏み込まない。お互いのジャンルを尊重した上で人付き合いしているから、いい緊張状態があっていいんじゃないですかね。
鳥飼 爪さんは、“かっこよく”会ってくれるんですよ。悲しいことがあっても、面白がってくれるし、それでこっちも笑っちゃうんです。常に、可哀想じゃない人でいてくれるし、わたしのこともそう見てくれるから、どんな話をしても惨めにならないんです。
構成/大泉りか
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