後藤が1999年にモーニング娘。に単独加入し、『LOVEマシーン』でグループ黄金期を切り開けば、2001年にソロデビューした松浦は抜群の音楽センスとアイドル性を兼ね備え、平成最強のソロアイドルとの呼び声も高い。翌年デビューの藤本も『ロマンティック浮かれモード』などアイドル界で歌い継がれる楽曲を残し、03~07年はモーニング娘。でも足跡を残した。
「後藤さん・藤本さんの活動と松浦さんの再始動の時期が重なったのは偶然かもしれませんが、アイドルのセカンドキャリアの新しい指針を見せてくれる、そんなムーブメントになってくれるかもしれません。この3人にはそれだけの知名度とスター性がありますから」
こう語るのは、20年来のハロプロファンでミュージシャンの劔樹人氏。映画化もされた自叙伝的エッセイ『あの頃。男子かしまし物語』で彼女たちがお茶の間の人気者だった時代のハロプロファンの活気をつづっている。
「アイドルから結婚・育児を経て第一線に戻ってくるには相当なエネルギーが要りますし、ファンがついてきてくれるかどうかも分からない。それでも今、人前で披露できるクオリティの歌唱を保っているだけでもすごいですし、おそらくはボイストレーニングも続けてきて、歌い続けたい気持ちが強いんだろうと思います」(劔氏)
1985年生まれの後藤と藤本、86年生まれの松浦と年齢も近い3人。結婚・出産・育児を経てきた共通点もある。後藤は2児、藤本と松浦は3児の母でもある。
「アイドルを卒業してしまうと、バラエティや俳優業がメインになるか、あるいはママタレ的ポジションに落ち着くことが多いのが現状ですから、なかなか歌を続けていくことは難しい。3人とも三者三様の音楽スキルを持っていますから、ブランクもものともせずに音楽を続けていくこともできるぞ、という道をこれから見せてくれるといいですね」
劔氏はセカンドキャリアを切り拓いてくれることを期待している。「社会のアイドルに対する、エイジズムやルッキズムに縛られた見方が変わらないと、“アイドル後”のキャリア作りは厳しいままが続くと思います。シンガーとしても稀有な彼女たちが、家族を持ちながら今できる音楽表現を発信してくれれば、それが元アイドルのイメージを変える一里塚になるかも、と期待してしまいます」