こうなると見えてくる風景も変わってくる。
生まれてから一度もプロレスを見たことがないままプロレスラーになったウナギ・サヤカはデビューしてからも東京女子プロレスしか知らないでいた。しかし、ストイックな日々を送る中、はじめて他団体の試合映像を見た。それがスターダムだった。
「本腰を入れてプロレスをやるんだったら、スターダムだなって、そのときに思ったんです」
女子プロレスをあまり知らない人にとっては意外かもしれないが、スターダムと東京女子プロレスのファン層というのはあまり被っていない。だからスターダムのファンは、いきなり現れたウナギ・サヤカを「誰?」という異物を見るような目で迎え入れた(肉体改造に成功していたので、すでに過去の彼女とはプロレスラーとしてのフォルムも激変していたのだが)。
これも大きく変わるチャンスのひとつだったが、「誰?」から理解が進まないうちにズカズカとスターダムの世界に踏みこんできて、中野たむ率いるコズミックエンジェルズに加入すると、1カ月後には6人タッグの最高峰であるアーティスト・オブ・スターダム王座を獲得。一部のファンからは「誰?」が「誰だよ!」という反感も抱かれた。