公演開始30分前、ステージ衣装に着替えた松岡がやってきた。
「チャンピオンになれました!」
「知ってる! 沙弥ちゃんがクルクルって回って、ベルトを獲ったときの映像も見たよ!」
奇跡の再会から、わずか半年。
チャンピオンになって心も体も大きくなった上谷の姿に、公演を控えて緊張しているはずの松岡も笑顔が止まらない。せっかくだからとチャンピオンベルトを持っての記念撮影をしましょう、という話になったのだが、松岡は「私はチャンピオンじゃないのに、一緒に持っていいんですか?」と真顔で聞いてきた。おそらく瞬時にベルトの重みに気づいたのだろう。上谷はピカピカに磨いているが、歴代王者の血と汗と涙が染みこんだベルトは、やっぱり風格がある。
そして上谷がぐるーっと回り道をして、7年目にしてようやくここまでたどり着いたという重みを誰よりも知っているから、松岡はベルトに敬意をはらい、端っこだけをちょこんと持ったのだが、さすがにこれでは画としておかしい。上谷が促すようにして、ベルトの中央をふたりで支えるようにして持ったのが、この記事を飾っている写真。そういう背景を知った上で見直していただくと、単なる記念写真ではなく、二人の歴史がギュッと詰まった一枚であることが伝わるかと思う。最高の笑みを浮かべる松岡はな、笑顔というより感慨無量な表情の上谷沙弥。なぜか脳内では高橋みなみの「努力は必ず報われる」という名言が再生されて、見ているだけで涙が出てきてしまうような瞬間……諦めないこと、続けていくことは本当に大事なんだな、と実感させられた。
本来であれば、これがこの日のクライマックスになるはずだった。
【後編へつづく】“バイトAKB同期”スターダム上谷沙弥がHKT48松岡はなのステージに感涙「もうエモすぎて」