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UPDATE|2022/03/06

新日本プロレス50周年記念日で“音楽”が呼び起こした感動、棚橋弘至がつないだ歴史のバトン

藤波は現役としてメインイベントにも出場。オカダ&棚橋との黄金トリオを結成! 写真提供・キングレコード



まず入場テーマ曲が流れ、そのあとにモニターにレスラーの名前が掲示されるという形式。だからオールドファンほど、誰が登場するのかを事前に察知しやすく、マスク着用で声援を飛ばせない状況下ではあっても、テーマ曲が流れた瞬間に「おおっ!」と館内の空気がザワつくのが手に取るようにわかった。

テーマ曲の力というのは本当にすごい。入場時に流れるのはほんの1分足らずなのに、何十年経っても、その楽曲となつかしの入場シーンが脳内で紐づけられているから、超ウルトライントロクイズよりも早いタイミングで、音が鳴った瞬間に選手の姿がパーンと頭の中に浮かびあがってくる。音楽のジャンル数あれど、本当にプロレスのテーマ曲というのは特異すぎる世界である。

それをもっとも感じたのは、場内にマサ齋藤のテーマ曲が流れた瞬間。すでにマサさんは鬼籍に入られているので、武道館にはやってくることができない。次の瞬間、エントランスに現れたのはマサさんの盟友ともいうべき、元レフェリーのタイガー服部さんだった。そこにマサさんはいなかったけれど、あの瞬間、すべての観客の脳裏にマサさんの雄姿が浮かびあがっていたはず。思わず感涙モノの演出だった。

いや、すべての観客というのはさすがに言いすぎかもしれない。50年の歴史を重ねてきた中で、本当にここ数年でファンになった客層もかなり増えてきた。彼らは70年代〜90年代の新日本プロレスを観てきていないから、古いテーマ曲を聴いてもピンとはこないだろう。そこで素晴らしい働きをしていたのがリングサイドにいた棚橋弘至だった。

リング上にレジェンドが登場する中、リングの周りを現役選手が取り囲んでいたのだが、テーマ曲が流れるたびに棚橋は客席に向かって拍手を煽ったり、さまざまな表情を浮かべてはこれから登場する選手を迎え入れていた。これなら若いファンにも「タナがあれだけ喜んでいるんだから、きっと、すごい選手なんだ」ということが伝わる。こういう存在がいてこそ、50年という歴史はしっかりとバトンをつないでこれた。正直、50年の歴史の中でもっとも辛く、厳しい時代を支えてきた棚橋弘至が誰よりも熱心に動いてくれている姿に、この組織の強さと半世紀も続いてきた理由を見たような気がした。

AUTHOR

小島 和宏


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