そして、そこから本当に上谷は大きく変貌する。自分からぐいぐいチャンスを掴みにいくようになり、対談から2か月も経たないうちに中野たむを撃破して白いベルトを奪取。それまでのどこか自信なさげで、ちょっとしたことで「どうしよう……」と頭を抱えてしまう、弱い上谷沙弥はもういなくなっていた。
ちょっとしたきっかけで内面が変わる人間は、これまでも何人か間近で見てきたが、ここまで短期間でガラッと変わったケースはちょっと記憶にない。面白いもので、そうやって自信がついてくると、立ち居振る舞いも変わってくる。なによりリングに立っているだけで貫録みたいなものが際立つようになってきた。
だが、それは単なる気のせいではなかった。実際に彼女の体はひとまわり、いや、それ以上に大きくなっていたのだ。
「チャンピオンになった以上、弱そうというか、細く見えてしまうのはよくないな、と思って練習メニューを変えたんです。走り込みもしっかりするようにして、全体的に体が大きくなってきたと思います」
ちなみに試合前のコールでは「55㎏」とアナウンスされているが、現在、59㎏はあるという。もともと手足が長いので、ちょっとひょろっとした感じに映ってしまうシルエットではあったのだが、そういう見え方はかなり改善された。チャンピオンになってから、まだ2か月も経っていないのに、まさに激変である。
そんな上谷に、思わぬドラマが待ち構えていた。