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UPDATE|2015/07/29

武藤彩未「たったひとりのライヴツアー」で聴かせた確かな〝成長の跡〟

武藤彩未ライブハウスツアー2015「TRAVELING ALONE」ライヴレポート@下北沢GARDEN 2015.JUL.25


 今年も開催された武藤彩未の夏のツアー全4公演。南関東4都県を巡った“たったひとり&rdquo:の夏のツアー、3公演目に当たる、東京・下北沢でのライヴをレポートする。
 

 台風のどさくさで、いつの間にか消えてしまった梅雨。関東地方は連日最高気温30度を超える暑さが続き、真っ昼間にちょっと外出するだけでウンザリするような炎天が降り注いでいる。そんな暑さを吹き飛ばせてくれるような、イヤ、更に体温を上昇させるような熱いライヴを繰り広げているのが武藤彩未だ。

 ちょうど1週間前の7月18日に埼玉・西川口公演でスタートした夏のツアー「TRAVELING ALONE」は20日神奈川・新横浜公演を経て、この日の下北沢が3公演目。体調も喉の具合もちょうどフル回転の頃合い……。史上最高のライヴが観られるのではないかと、集まったファンたちの期待も高まっている。

 会場内はやはり小さめのライヴハウスということで、春にライヴを行った渋谷公会堂はもちろん、渋谷CLUB QUATTROと比較してもステージとフロアの距離が近い。昨年夏のツアーと同規模のライヴハウス公演が実現したことは、ファンにとってはラッキーだったのかも。ステージの背景には手作りの「AYM」のロゴが飾られ、武藤自身の部屋をイメージしたという舞台上には今までのステージ衣装や私服がハンガーに掛けられ、ほかには花びらを模したキュートなライトスタンドが置かれているだけのシンプルな構成。そこには、彩未ファミリーと過ごせるこの場所こそが自室のように落ち着ける場所である……という武藤のメッセージが込められているようだ。

 17時55分、今回のツアーのお楽しみの1つでもある「AYMラジオ」がスタート。武藤彩未自身がラジオのDJを務め、トークと音楽を届けるという趣向。この日は昨年の夏のツアー最終日・渋谷CLUB QUATTRO公演より『A.Y.M.』、昨年4月29日のメジャーデビューライヴより『彩りの夏』と2曲のライヴ音源がオンエアされ、場内は早くもライヴ本番に劣らぬほどの手拍子やコールで盛り上がり、その勢いのままライヴ本番に突入!

 いつも通り「ナウシカのテーマ」に乗せて登場する武藤。普段と違うのはバンドメンバーがいないこと。原点に戻って、これまでの成長を確認するべくたったひとりでのツアーを敢行する武藤。その成長をファンもじっくりと確認できるライヴとなりそうだ。『交信曲第1番変ロ長調』のイントロが始まるとフロアは早くもヒートアップ。手拍子と彩未コールが飛び交う中、ライヴできる喜びに満ちた笑顔の武藤も初っぱなからフルスロットルでファンに応える。

 マイクスタンドをセットして始まる、次の曲は武藤彩未のテーマソングともいえる『A.Y.M.』。赤と青のライトに浮かび上がる武藤の姿は、ちょっと大人びてきたようだと感じる。続くシンプルなロックナンバーの『HAPPY CHANCE』ではフロア全体が縦ノリで揺れ、コールと手拍子、この指止まれのポーズで一体化する。

 MCではツアー折り返しの「折り返し」がなかなか出てこずに笑いを誘う武藤。「隅田川花火大会を蹴ってまで来てくださったので、ここに来て良かったと思えるライヴをします!」と盛り上げた。続いては『Seventeen』。手拍子に包まれキュートな振り付けを披露する武藤は、シンプルなボブのヘアスタイルに、白地に青や赤のビビッドな色の入った上下にまっ赤なベルト。ベルトの後ろは可愛らしいリボン状になっている。途中前方のファンのおかしな振りが目に入ったのか(?)、一瞬武藤が笑ってしまう場面も。それだけ彼女にとってはリラックスできるホームな場所といえるのだろうか。

 続く『Daydreamin’:』は、いつもより大人っぽい雰囲気を漂わせながら披露してフロアを酔わせ、『宙』ではスカイブルーのライトに満たされた空中を浮遊する気分にさせられる。『ミラクリエイション』では白いレースの上着と小さな羽根つきのハットを着用し、フロアからは「可愛い!」のため息が漏れる。ウサギの耳のポーズもいつもより可愛く決まった。

 MCでは「宣言を持ってきました。大学に行ってないので正直勉強したいです」と言う武藤にどよめきと笑いが起きる(笑)。LoGiRLで相方を務める清野茂樹氏と相談して、「英語を勉強、TOEICに挑戦する!」と宣言して拍手をもらう。目標は最初900点と言っていたが、さすがにハードル高すぎとフロアになだめられ、最終的に目標は700点と決まった。試験は10月に受けるということで、700点突破したらたいしたものと思うが、果たして?

 ここで楽曲はバラード調にアレンジした『未来へのSign』。ピアノ一本をバックに歌い上げる武藤の歌唱はまさに絶品。ただ上手いだけでなく、気持ちをじっくりと込めて歌い上げ、フロアはただただ、聞き入るのみだ。目を閉じると歌詞の情景が浮かんでくる。こんな大人っぽく成熟した歌もいつの間にか歌えるように成長した武藤。これを生のバンドで聴きたい!という欲求がわき起こってくる。

 そして今回のツアーで1曲ずつカバーを披露している80年代アイドルの楽曲。今日は斉藤由貴の代表曲でもある『悲しみよこんにちは』だ。2年前に発表されたカバーアルバム『DNA1980 Vol.1』に収録されている楽曲だが、その音源と比べても歌唱力・表現力が格段にアップしているのがわかる。


次ページは、大盛り上がりの後半戦へ

1人きりでの旅を経て、TIF、そして三井ホールへ!


 さて、ライヴ後半はいつも通り「A!Y!M! アヤミ!」コールから始まる。夏っぽい白フチのサングラスをかけた武藤に煽られ「シモシモシモキタザワ!」とコールし盛り上がる。そのまま『RUN RUN RUN』でフロア全体タオルを振り回し、『Doki Doki』でフロアの盛り上がりは最高潮に。これでもかと繰り出される手拍子とコールに、武藤も嬉しそうだ。続く『パラレルワールド』でもファンの勢いは止まらない。全力の応援に武藤も汗を飛ばして応え、最後はシンガロングで締める。

 本編ラストは『OWARI WA HAJIMARI』。夏のツアーは翌日の稲毛で終わるが、それは武藤にとって新たなる始まりでもある。翌週には武藤にとって大切な場所の一つであるTOKYO IDOL FESTIVALでソロとして初登場する。9月にはイナズマロックフェスにも出演。新たなる挑戦が待っている。

 鳴り止まない彩未コールに出迎えられてステージに戻ってきた武藤。ボーダーのツアーTシャツを2着使ってリメイクした衣装に着替えての登場だ。「Tシャツをリメイクして着て来て!」とファンに無茶振りする武藤に笑いが起きる。アンコール1曲目は『明日の風』。アコースティックギターに乗せ、しっとりと歌い上げる武藤。この場所でファンの前で歌える喜びと感謝を込めて歌うその歌唱は、先ほどの『未来へのSign』同様聴く者をその歌の世界へと連れて行く力量を感じる。10月4日に行われるアコースティックライヴ「A.Y.M. Ballads」への期待感は高まるばかりだ。

 しっとりした雰囲気から一転、『女神のサジェスチョン』でフロアはまたヒートアップ。ステージに舞い降りた可憐でさくらの花のようにキュートな女神・武藤のパフォーマンスに、満員の観客は今夜も元気をもらい、逆にステージ上の武藤に歌い続けていくパワーを与え、熱いステージは最後の曲『彩りの夏』へ。アイドル然とした歌詞と振り付けがフロアを夢心地にさせる。いよいよ夏本番。翌週はTIFのステージが武藤を待つ。初見の観客も多いステージで、更に多くの人間の心を掴むことになるだろうと、シンガロングしながらお台場の暑い空に思いを馳せた。

 バンドスタイルではなかったからこそ、武藤彩未の歌の魅力をじっくりと堪能することの出来た本日のライヴ。その成長、特にバラードにおける魅力は誰もが感じたことであろう。「アイラヴユー!」と叫び、ステージを去って行く武藤を見ながら、心は早くもお台場、三井ホールへと飛んでいる。

武藤彩未『I-POP』

セットリスト
01 交信曲第1番変ロ長調
02 A.Y.M.
03 HAPPY CHANCE
04 Seventeen
05 Daydreamin’:
06 宙
07 ミラクリエイション
08 未来へのSign
09 悲しみよこんにちは
10 RUN RUN RUN
11 Doki Doki
12 パラレルワールド
13 OWARI WA HAJIMARI
~アンコール
14 明日の風
15 女神のサジェスチョン
16 彩りの夏

 
竹崎清彦 アイドル、ファッション、スポーツ、ゲーム攻略本など幅広く執筆。趣味はライヴ観戦。好きなアーティストを追いかけ世界中どこへでも行きます! 80年代モノに詳しい。

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