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UPDATE|2022/01/18

「私は事務所に甘えていた」元PASSPO☆・槙田紗子の振付師としての出発点

槙田紗子 撮影/松山勇樹

2015年までPASSPO☆として活動、卒業後は『すきっ!』(超ときめき▽宣伝部)など数々の楽曲の振り付けを担当している槙田紗子。近年ではアイドル・フェス「サコフェス」や朗読劇をプロデュースするほか、2021年からはアイドルグループのプロデューサーも務めている。そんな彼女の軌跡をあらためて振り返るとともに、プロデューサーとしての信念を聞いた。(前中後編の中編)※▽はハートが正式表記

>>前編はこちら

【写真】振付師として活躍・槙田紗子の撮りおろしカット【10点】

──PASSPO☆卒業後、事務所に籍は残しながら女優業やライターなどいろいろトライしていましたけど、正直なところ、あまり順風満帆という感じではないように見えたんですよね。

槙田 完全にくすぶっていました(苦笑)。アイドルを辞めたはいいけど、これから何をしていいのか全然わからなかったんですよ。グループにいたときから振り付けやライブ演出をさせていただいていたこともあって、基本的にはそっちの裏方方面に進みたいという考えがあったんですね。だけど、私が振付師になりたいと言ったところで、事務所的にはメリットが少ないんです。

──振付師の竹中夏海先生も同じ事務所所属でしたよね?

槙田 竹中先生はあれだけ売れている方だから例外ですよ。でも私に関しては、できれば裏方じゃなくて表舞台に立ってもらいたいというと考えがスタッフさんからもヒシヒシと伝わってくるんです。それで「ここは『女優になりたいです』って言ってもらいたいのかな? そう言ったほうが収まりはいいよね?」とか変に私も妙に気を遣っちゃって(笑)。普通、アイドル卒業後の進路としてよくあるのは「女優」「モデル」「バラエティタレント」の3つなんですね。私はモデル体型でもないしトーク力も高くないから、強いて言えば女優しかできることがない。それで「女優になりたいです」とか言っていたんですけど、これってめちゃくちゃ消極的な理由じゃないですか。ひどい話ですよね。

──真摯に役者業に取り組んでいなかった?

槙田 こんなナメた考えだと他の役者さんたちに失礼だと気づいたんです。私は元アイドルということで、規模が小さいながらも舞台で主演とかをやらせていただく機会が多かったんですね。でもその場には主役になりたくてもなれなかった、必死でオーディションを受けているような本気の役者さんたちが大勢いるわけです。お金にはならなくてもまっすぐ夢を見ながら、稽古場で真剣に演技論を戦わせている他の出演者たち。本当にお芝居が好きな人じゃないと続けられない道だし、私なんてその場にいること自体がいたたまれなかったです。他の方たちに申し訳なかった。

──女優業で挫折してからは、どのような道を?

槙田 そこからはいよいよ迷走していましたね。まさに暗中模索という感じで。その頃の私って自己肯定感がゼロだったんですよ。「どうせ私なんて……」みたいなモードにハマっちゃって、顔もどんどんブスになっていくし(笑)。今見返しても「誰?」って思うくらい本当にひどい顔をしていますから。結局、自分には何もないというか、PASSPO☆という看板に守られていただけなんだという無力感がすごかった。そもそも私は裏方志向のはずなのに、一度アイドルとして名前が世に出たものだから、「拭えない承認欲求」みたいなものが自分の中にも強くあって。だからもう考えていることがデタラメなんですよ。

──「槙田紗子よ、お前は何がやりたいんだ!」って自分で自分に問いかけるような?

槙田 本当にそんな感じです。人間っていろんなバランスを取りながら生きていると思うんですけど、当時の私はアンバランスもいいところでした。それでバイトをしながら自堕落な生活を送っていましたね。最初はアイドル時代の貯金を切り崩して生活していたんですけど、そのうちお金がなくなってきたからヤバいなと思いまして。

CREDIT

取材・文/小野田衛 撮影/松山勇樹


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