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UPDATE|2022/01/14

『全裸監督』出演・俳優に転身した川上なな実「過去の悲しみを芝居で出して、人に評価されたい」

写真/熊谷直子

2019年にNetflixドラマ『全裸監督』に出演したことでも話題を呼んだ川上なな実。かつての芸名「川上奈々美」から「川上なな実」に改名し、AV女優としての仕事を引退して専業の役者として生きていくことを発表したが、実はこの2年間、彼女が被告になった裁判が進行していた――。今まで公表していなかった訴訟のことや、個人事務所を営みながら映画製作や写真展の開催に奔走する現状について、包み隠さずに語ってもらった。>>前編はこちらから

【写真】川上なな実の写真集カット&インタビュー中の撮り下ろしカット【11点】

――今月でAVの仕事を、2月にはストリップを引退し、今後は俳優業一本でやっていくそうですね。今までの仕事をやめた理由は?

川上 一番大きいのは、やり尽くしたというか、もう同じことの繰り返しでしかなかったから。私、知らないものを見たいし学びたいし、向上心もすごく強いんですよ。だから、今までの繰り返しになっているものは全部やめることにしました。

――俳優業を選んだ理由は?

川上 最終的に決断したきっかけは、『全裸監督』(2019年)がきっかけです。あの作品に出てたくさん評価が返ってきたことで、「役者にならなきゃいけない」と思ったんですよね。監督のひとりの内田英治さんが私をキャスティングしてくれたんですけど、内田さんがプッシュしてくれたのを無駄にしちゃダメだなって思ったのもありますし。

――初めて演技の仕事をしたのは、2013年の舞台作品ですね。そのときから手応えがあったんですか?

川上 あ〜、ありましたね。飛田新地の遊郭の話で、私は失語症の遊女っていうちょっと特殊な役だったんです。まわりは普通の役者さんだったけど、私は裸の仕事を生業にしていたので、「私の方が役のことをわかる」って思ってました。当時はその女の子になりきらなきゃって思って、家で布団をかぶってひたすらたった一言のセリフを言い続けたんですよ。そしたら結果的に「よかったよ」って褒めてもらえたんですけど、それがAVの世界で言われる「かわいい」とかと全然違って、自分の胸に素直に入ってきたんです。

――自信につながったんですか?

川上 はい。「私、いけるな」ってなぜか確信してしまいました(笑)。芝居の中で過去にあった苦しみや喜びを投影してみると、評価が返ってくるっていうのも、自分の救いになるんです。その上、映画祭でレッドカーペットを歩かせてもらったりもするので、「有名になりたい」っていう子供の頃からの承認欲求なのかが満たされたりもして(笑)。

――『全裸監督』もAV女優という自身の経歴と重なる役でしたが、あの作品の川上さんの演技は、役というものを超えてると思うんです。演じているんじゃなく、この仕事に命を削ってぶつかっている川上さん自身の姿が画面にきざまれていて、心を揺さぶられました。

川上 ありがとうございます、うれしいです。実はあの作品を撮ってる途中で、内田監督に「君、やばいよ。どうすんの?」って言われたんです。内田監督とは関係性もできていたので、その一言で奮起して、とりあえず遊女のときと同じ作戦。家で鏡を見ながら、今までのつらかったことをたくさん思い出しました。親バレしたとき、お兄ちゃんから言われた「あいつ、終わったわ!」っていう一言を何度も自分に向かって言って、涙を流して。そうやって落ちるところまで落ちてから、最後の濡れ場のシーンに挑んだら、すごく評価をいただいたんです。
AUTHOR

西中 賢治


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