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UPDATE|2021/12/29

元家庭科教師 レディ・Cのデビュー秘話「プロレスをやらせてください!」父に号泣土下座した夜

撮影/松山勇樹

中学・高校の家庭科教師から転身した異色の女子プロレスラーがいる。スターダム所属のレディ・C。177cmという恵まれた体格から、「河津落とし」や「脳天唐竹割り」といった故ジャイアント馬場さんの技を繰り出し話題を呼ぶ今売出し中のレスラーだ。だが、彼女、実は子供の頃からスポーツエリートだったわけでも、プロレスファンだったわけではない。それでもプロレスに出会い人生を変えられた。「教師を辞めてプロレスラーになります!」猛反対する父親に涙で土下座し、リング上で生きる道を選んだ彼女に話を聞いた。(前中後編の中編)

【前編はこちらから】「多忙で学校でもボロボロ泣いていた」家庭科教師を変えたプロレスとの出会い【スターダム レディ・C】

【写真】家庭科教師時代のレディ・C、試合中のカットほか撮り下ろしカットも【12点】

──「プ女子」という言葉もあるように、今はプロレス好きな女性も増えています。しかし実際に自分もプロレスラーになろうとするファンは少ないですよね。

レディ・C もちろん私も最初は自分がプロレスラーになるなんて考えていませんでした。なにしろリングの上の選手たちは、私から見ると超人。自分は応援グッズを作ったりコスプレしたり、ファンとして応援することがすべてだと思っていたんですよ。ただ今は多くの女子団体がワークショップを開いていて、一般の方にリングを開放しているんですね。内容的には軽い筋トレとかマット運動とかフィットネス感覚のものなんですけど。私も友達からワークショップの存在を教えられ、スターダムは家から近かったこともあって通い始めたんです。最初は本当に軽い気持ちだったんですよね。

──もともとスポーツは得意じゃなかった?

レディ・C まったくダメでした。ワークショップに通い始めても、最初は腕立てや腹筋すらまともにできませんでしたから。でも、そのうちスクールボーイといった丸め込みの技やロープワークも教えてもらえるようになりまして、徐々にのめり込むようになったんです。

──ロープに振られるのも、実際にやられてみると痛いんですよね。

レディ・C ビックリしました! ファンとして応援しているときは当たり前に見ていたけど、自分でやってみたら背中が痛い痛い(笑)。ロープって綱みたいなものかと思っていたんですけど、実際は硬いワイヤーですからね。もうアザだらけ。それと同時に「やっぱりプロレスラーってすごいな」って感動しました。よりプロレスを深く観戦できるようになったんです。グラウンドの攻防とかって、見ているだけだとよくわからないですからね。そのへんは勉強と同じで、仕組みや原理がわかってくると「もっと知りたい!」という思いが強くなる部分がありました。

──教師という安定した職業を捨ててプロレス入りするにあたっては、ご両親に土下座して懇願したとか。

レディ・C 母親はまだ理解があったんですよ。キツかったのは父ですね。プロレスラーになると告げる前に、母親に対しては免疫をつけていたんです。「今、ワークショップに通っているんだ」とか「プロレスってすごく楽しいんだよ」と言って。母親はまったく興味なさそうでしたけど(笑)。当時の私は公立学校の教員採用試験というものを毎年受けていて、毎回、最終で合格点に届いていなかったんですよね。周りの「当然、今年も受けるよね」という無言の重圧の中、その年も最終までは順調に進んでいたんですけど、「待てよ? 今年は本当に受かっちゃうかもしれないな。そうしたらプロレスラーになれなくなる」という考えが頭をよぎったんです。毎年、受けていたら問題の傾向とかもわかってくるじゃないですか。

──教員になりたくても最終まで進めない人もいるというのに、ひどい話です(笑)。

レディ・C 本当に返す言葉がない(苦笑)。「私はもう辞めますから、教員採用試験も辞退します」と伝えたら、「とりあえず受けるだけ受けてみてよ」って校長先生まで出てきて説得されましたね。もちろん周りの先生方は全員が「プロレスなんて現実的ではない。教員を続けたほうが絶対にいい」と大合唱でした。

──当然、そうなるでしょうね。

レディ・C 自分の性格からして、一度、教員採用試験に受かってしまったら一生そのまま教員として過ごしていたと思うんです。途中で教員を辞めることは考えられなかった。だったら教員採用試験の受験そのものを辞退しようと、そう考えたんですね。母親からは「あなたがそこまで言うのなら勝手にすれば? でも絶対にお父さんは許さないと思うよ」と冷たく言われ、いよいよ父親との対面ですよ。
AUTHOR

小野田 衛


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