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UPDATE|2015/05/11

約2年ぶりの福神復帰 乃木坂46高山一実、葛藤の先にある笑顔

5月10日放送の『乃木坂工事中』(テレビ東京)で発表された12thシングル選抜では、生駒里奈がセンターに就いたことなど、いくつかの「驚き」があった。そのひとつが高山一実の約2年ぶりとなる福神復帰だ。番組では、これまでと逆サイドになったことについて「今から楽しみです」と発言していたが、久々の福神メンバーとして心に期するものがあったはず。
 
 乃木坂46の中で一般的な知名度の高さを考えた時、白石麻衣や生駒里奈に並ぶのが、バラエティ能力に秀でた高山一実なのかもしれない。『しくじり先生』や『ミラクル9』といったテレビ番組で、乃木坂46という名前を発信し続けており、グループへの貢献度は計り知れないのだ。
 
 しかし、高山は「山口百恵のようなアイドルを目指していた」「ハロプロさんが大好きだった」と王道アイドルへの愛を語ることが多く、自身の活かし方との間でジレンマを抱える時期もあった――。

 


 初期の頃から、「乃木坂46にとって『乃木坂って、どこ?』(乃木坂工事中の前身番組)が劇場みたいなもの」という意識があった高山。それは「ここで結果を残すしか選抜に残ることはできない」という決意でもあった。『乃木坂って、どこ?』では、バラエティ能力を発揮して番組にとって必要不可欠な存在になっていく。
 
『乃木坂って、どこ?』番組プロデューサーも「一番早く番組に順応したメンバー。彼女がしゃべると何かが起こるという期待感がありますよね。『王道のアイドルを目指したい』という想いを抱えながら、笑いに対して悩み考えてトークやギャグを絞り出す姿が素晴らしいです」(『OVER TURE』002)と、高山に絶対の信頼をおいている。

『乃木どこ』以外の番組にも出演する機会が増えた。「他のメンバーより優れているところがないから、呼ばれている仕事をクリアしていくしかない」と考えていた高山は結果を出していく。出演回数の多い『しくじり先生』では、4月からゴールデンタイムに昇格しても高山の席は用意されていた。筆者は平成ノブシコブシ吉村崇氏と仕事をする機会も多いのだが、吉村氏の話から高山をひとりのタレントとして受け入られているように感じている。
 
 高山は、さまざまな番組に出演する機会を大きな「チャンス」と思う一方で、「乃木坂46を応援している人も、テレビでの私を観てアイドルよりタレントとして捉えているのではないか」、「ファンの方は複雑な思いがあるのではないか」という不安を抱えていた。
 
 そんな高山にとっての“支え”になっていたのは、バラエティに出てる時は「モーニング娘。のため」とがんばってきた道重さゆみだった。道重のライブで見せるキラキラした姿もバラエティでがんばってる姿も、高山は好きだった。「自分も誰よりアイドルを極めて、その うえでテレビに呼ばれ時に何かを残せる人になりたい」。そう思えるようになった。
 
『乃木どこ』では、初期はガチガチにキャラを固めていたこともあったが、しだいに肩の力を抜いて番組に臨むことができるようになった。いい意味でバナナマンに身を委ねて、空気を読みながら声を出す時は声を出すようにしているという。リニューアルした『乃木坂工事中』でも、高山は緩急をつけたトークやリアクションを見せていくことだろう。


乃木坂46『命は美しい』

 外の番組に出る時は、最初こそ乃木坂46代表という意識が強く「乃木坂46は上品なイメージだから……」と考えすぎて、「ただアイドルが出てるだけ」で終わったこともあったという。しかし、スタッフを通して秋元康氏から「自由にやったほうがいい」というアドバイスを受けたことで、意識が変わる。「乃木坂46は清楚なイメージがあるけど、こんなヤツもいるんだよ」と発信して、乃木坂46という名前をとにかく知ってもらうことが大切なのではないかと思えるようになった。
 
 バラエティ番組はプロの方たちがそろっている。アイドルが話すなんてことのないエピソードだって、プロが拾ってくれるから面白くなる。そう考えている高山は、「どうしたらうまく拾ってもらえるか」を頭に入れつつ、楽しみながら番組に参加しているようだ。
 
 高山自身はコミュニケーション能力が低いと考えているようで、限られた時間しか一緒にいられない握手会に苦手意識を持っている。だからこそ、自分のファンに対して感謝の気持ちが強い。「ファンの人に支えられているから、今の私はアイドルでいられるし、みんなのおかげで笑顔になれる。だから、自分もテレビを通して笑顔を返したい」と語っている。
 
 これから12thシングル福神メンバーとしての活動が始まるが、6月中旬には舞台『じょしらく』出演が待っている。高山にとってハードな日々がはじまりそうだ。
 
 そんな高山が各媒体で話している、アイドルとしての“願い”は「小さいハコでイベントをやりたい」ということ。理想はハロプロで行なわれているソロのバースデーイベントだ。自分の好きな曲でセトリを組んで、アイドルアイドルしたライブをしてみたいという。その“願い”が叶った時の高山の一番の笑顔を見ることができるのかもしれない。

乃木坂46『命は美しい』

大貫真之介 アイドルとお笑いを中心に執筆。乃木坂46写真集『乃木坂派』、『EX大衆』、『TopYell』、『日経エンタテインメント』、『an an』アイドル特集号、などで乃木坂46のインタビュー記事を担当した。

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