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UPDATE|2015/05/01

もっと聴いていたい2時間20分 武藤彩未ライヴ『BIRTH』で示した〝ソロアイドルの頂〟

武藤彩未Special Live 「BIRTH」@渋谷公会堂ライヴレポート 2015.APR.29

 武藤彩未のメジャーデビュー1周年、そして19回目の誕生日を記念するライヴが4月29日東京・渋谷の渋谷公会堂で行われた。昨年の同じ日、渋谷のTSUTAYA O-EASTでメジャーデビューライヴを行って以降、ライヴを重ねるたびに目を見張る成長を遂げてきた武藤が、1年でどれほど成長したのか? 記念すべきライヴの模様をレポートする。
 

 まだ4月にもかかわらず、初夏のような陽気に包まれた東京地方。GWの初日に相応しい行楽日和となり、会場前に集うファンもTシャツ1枚の姿が目立つ。そして会場である渋谷公会堂の中も、外の陽気に負けず劣らずの熱気に包まれた。1年前にメジャーデビューを遂げ、昨夏は小さなライヴハウスを回っていた武藤彩未が、昨年末の赤坂BLITZを経て、とうとう音楽コンサートの聖地である渋谷公会堂にたどり着いたのだ。「渋谷公会堂のステージに立つのが夢」と常々口にしていた武藤にとって、その夢が叶う19回目のバースデー。初見の観客も多い中、そしてデビューから彼女の進化を見届けてきたファンの前で、今回はどんなパフォーマンスを見せてくれるのか?

 ステージは、下手奥にドラムセット、上手奥にキーボードが置かれ、手前にはそれぞれベースとギターが配置されている。今回、初めてベースを加えたラインナップのバンド編成で、サウンド的にも進化が期待される。背景には大きな白や透明な球体が配置されている。後にわかったことだが、白い球体はスクリーンの役割も兼ねていた。

 開演前、場内には影ナレとして武藤と清野茂樹アナの“LoGiRLコンビ&rdquo:による生トークが行われ観客のハートを温める。さらにはバンドメンバー4人の盛り上がり過ぎな影ナレに続き18時18分、いよいよライヴがスタートする。テーマ音楽に乗ってまずはバンドメンバーが登場。続いて武藤がステージ上に現れると、場内は早くも総立ち、割れんばかりの大歓声に包まれる。武藤は夢の舞台に立てた興奮なのか、場内の大歓迎ぶりに感激したのか、早くも涙を流している。

 そんな高揚の中1曲目の『Are You Ready 2015』がスタート。ディストーションの効いたギターサウンドは、まさにロックコンサートの激しさ。昨年の「BIRTH」で披露された同曲はまだアルバム収録もレコーディングもされておらず、いきなり攻めの選曲といえる。武藤自身が作詞した歌詞は憧れのステージに立てた喜びを歌う。登場時の涙の影響か、歌唱は多少上ずり気味。「渋谷公会堂、アーユーレディ? 行くよ!」と叫び『Doki Doki』が始まると、武藤の歌も落ち着きを取り戻していく。どこか懐かしいイントロで始まる同曲、観客も“タタン&rdquo:というリズムの手拍子をこなして盛り上げる。武藤の衣装はピンクを基調としたノースリーブのミニスカワンピースにステージセットと同様に丸いオブジェがついている。足下はシルバーのヒールに白いソックス。

 「皆さん盛り上がってますか? 遂にやって来ました渋谷公会堂! もっと盛り上がっていくよ!」と3曲目『Seventeen』がスタート。何か楽しいことが始まりそうな予感に満ちた曲を実に楽しそうに歌う武藤の姿が印象的だ。ぴょんぴょんと飛び跳ねながら客席を盛り上げていく。

 MCでは憧れの場所に立てた喜びと感謝を口にする武藤に温かい拍手が送られる。さらにはかつて可憐Girl’:s時代にイベントでこの場所に立ったことがあること、そして今日、近くの代々木体育館ではさくら学院の同期の松井愛莉と三吉彩花が「GirlsAward 2015 SPRING/SUMMER」のステージに立っていることを嬉しそうに語る。会場から「愛莉!」の声が起きると、「え?そこは彩未でしょ?」と返して爆笑させた。

衣装や演出、そして力強い歌声で観客を魅了


 MCに続いてはアップテンポな『女神のサジェスチョン』そして衣装を瞬間チェンジして『ミラクリエイション』と続いてヒートアップさせる。衣装は先ほどのデコレーションの取れたシンプルなピンクのワンピースで、スカートの裾はシースルーになっている。聞く者を幸せな気分にさせてくれるメロディラインが特徴の同曲。「LoGiRL」で武藤に指南されたウサギの耳の振り付けを照れながらもこなすファンたち。武藤もバンドメンバーも、そして観客たちも一体となって楽しい時間を過ごす優しい空気に満ちている。

 幻想的なイントロで始まった『宙』。青いライトに包まれたステージにレーザーが飛び交い、宇宙空間を漂うような浮遊感に包まれる。曲が終わり、オルガンのメロディが場内に響き、バイオレットのライトが暗闇を包む。そこへギターとドラムが絡んで幻想的な雰囲気を作っていく……。やがて背景の球体は地球儀となり、初披露となる『Daydreamin’:』のイントロが始まる。カラフルなレイヤーのミニスカート、そしてウエディングドレスのベールのような白いレースをまとった武藤が、早口な歌詞を器用に歌う。

 MCでは着替えた衣装をぐるっと回って見せ、「ちょっと大人っぽくない?」と笑わせる。そして1曲目の『Are You Ready 2015』に触れ、初見のファンのためにもう一度ワンフレーズを歌って拍手を浴び、「これからは作詞に挑戦していきたい」と宣言した。

 そしてここからは観客に着席してもらってのしっとりしたバラードのセット。『風のしっぽ』ではステージの球体に流れる雲や夕陽が映し出される。感傷的な歌詞を噛みしめるように歌う歌唱に、心が波立っていく……。さらには『とうめいしょうじょ』と切ないバラードが続く。アップテンポなロック調の曲とはひと味違う、しっとりと歌い上げるバラードでの感情のこもった歌も魅力的だ。そして次はピアノの静かなイントロに歌唱が乗る『永遠と瞬間』のアコースティック・バージョン。元々アップテンポな楽曲を、ゆったりとしたアコースティックバラードにアレンジたパターンも新鮮だ。曲後半、無伴奏での歌の美しさにはハッとさせられてしまった。

 「こっからは暴れませんか?」という武藤の声に再び立ち上がる観客たち。手拍子に乗ってバンドメンバーの紹介が始まる。ドラムの楠瀬タクヤ、ベースの須長和広、ギターの山本陽介、キーボードのnishi-kenと紹介されたところで、バンドと観客が仕組んだサプライズのハッピーバースデー合唱が始まる。驚いたような表情の武藤は、セットの球体に映し出されたバースデーケーキのろうそくを吹き消し、大きな拍手をもらう。

 「毎年誕生日は世界で一番幸せ者」と大喜びな武藤、この後の曲の手の振りをレクチャーする。ノリノリで振り真似を楽しむ観客たち。ライヴはいよいよクライマックスだ。

 タオルを振り回してステージと客席が一体となってヒートアップする『RUN RUN RUN』では、「楽しい!」と曲間で叫ぶ武藤が印象的。『パラレルワールド』では目くるめくレーザー光線が気分をより一層高めてくれる。天井一杯の満天の星が身体を空中へと浮遊させてくれるような感覚にしてくれる『A.Y.M.』では途中で歌詞を忘れてしまうというハプニングも起きたが、何とか最後まで歌いきり、続けて『交信曲第1番変ロ長調』へ。手拍子と彩未コールでステージを盛り上げるファンたち。力の限り「交信!交信!」と声を出して武藤を支える。

 「最後にもう一曲、盛り上がって頂けますか?」と武藤が紹介する最後の曲は『OWARI WA HAJIMARI』。失恋を「OWARI WA HAJIMARI」と前向きに歌い、元気づけてくれる、太陽のような超ポジティブな武藤の笑顔。19歳を記念して、客席一体となっての19回のジャンプで本編終了……バンドメンバーがステージを去る中、「悔しい~!」と先ほどの歌詞忘れを嘆く武藤に、客席から「もう一回!」の声が。「バンドの皆さん、私のワガママ聞いてくれますか?」と武藤がメンバーを促すと客席からは爆笑と大きな拍手が起きる。慌てて準備を始めるバンドメンバーに、歌詞を確認する武藤(笑)。場内は手拍子で盛り上げる。武藤が戻るまで即興の演奏で盛り上げるバンドメンバーたち。

 「ホントにごめんなさい」と武藤が戻り、『A.Y.M.』をやり直すという異例の事態に、客席は大喜びだ。しかし、せっかくやり直したものの、今度も1番と2番の歌詞がごっちゃになってしまうというオチに(笑)。武藤はライヴ後「悔いが残る」とコメントしたが、こんなさくら学院の頃と変わらない“ドジな彩未ちゃん&rdquo:っぷりも、愛すべき理由のひとつだ。「また間違えましたね……」と台詞を残してステージを降りる武藤にアンコールを求める手拍子と彩未コールがわき起こる。


次ページは、さくら学院の後輩へサプライズ!

「武道館に立ちたい」19歳武藤彩未が大きな夢を語る

 今回の新グッズである黒・白・グレーの3種のTシャツを組み合わせてアレンジしたミニスカワンピースと白いブーツという姿で現れた武藤。「もう一つお願いを聞いてもらっていいですか?」と切り出す。4月29日はさくら学院の後輩・堀内まり菜の誕生日でもある、ということでバースデーソングを歌うことに。客席のどこかで観戦しているであろう堀内が、突然のサプライズにいつもの調子でキョドっているのが目に浮かぶようであった(笑)。そして武藤らしい後輩思いの一面に触れ、心が温まった瞬間だ。

 さて、アンコール1曲目は新曲。先週歌詞が出来たばかりの未完成の曲ということで、「ここから皆さんと作り上げたい曲です。盛り上がればOK!」という『Happy Chance』という仮タイトルがついた曲がスタート。盛り上がりやすいロック曲で、初見の観客もノリノリで盛り上がる。続いてはニューアルバムでも特に人気の高い『未来へのSign』。どこか懐かしく切ないメロディラインに乗せて未来への希望を歌う武藤の笑顔がキラキラと輝いている。客席は「ララララ~」とシンガロングで一体感を高める。ノンストップで続く曲は『時間というWonderland』。四季それぞれの美しい光景や生きる喜びを歌った同曲に、これから季節が変わってもまたどんどん成長していく武藤のステージを見守っていきたいという思いがこみ上げてくる。

 憧れていた舞台に今立っていることを「夢みたい。渋谷公会堂に連れてきてくれてありがとうございます!」とファンに感謝し温かい拍手をもらう。そして次の夢、「日本武道館に立ちたい。今日来てくれた皆さんと一緒に行きたいです」と宣言して大歓声を浴びる。いよいよ最後の曲。「明日に向かって頑張っていけるような曲」と紹介した曲は『明日の風』。アコースティックギターに乗せしっとりと歌うその歌は、明日に向けて挑戦し続けている全ての人の胸に迫ったはずだ。ステージの球体には昨年の「BIRTH」ライヴでの写真が映し出される。「ララララ~」とシンガロングしながら、会場で聞いていたであろうさくら学院の在校生たちは、この歌にそしてこのライヴに何を感じたであろう?と思いを馳せる。彼女たちが何を得たのかは、いよいよスタートする2015年度のさくら学院のステージで証明されるであろう。

 「これからも皆さんの未来を彩れる人でありたいです。ずっと見守っててください」と挨拶する武藤に温かい拍手と歓声が沸き起こった。ステージ前方に整列するバンドメンバーたちと武藤。オフマイクで「ありがとうございました!」と叫ぶ武藤にまた大きな拍手が起きる。客電がつくが、いつまでも手拍子を続けるファンに、武藤が再びステージへ。

 「皆さん帰らないの?」と言う武藤に笑いが。「時間ありますか?」と煽る武藤に観客は大喜びだ。まさかのダブルアンコールは、武藤にとって大切な曲である『彩りの夏』。「これから来る夏が皆さんにとって素敵なものになりますように」という気持ちを込めて歌う武藤に、手拍子と彩未コールで応えるファンたち。

 バンド編成のライヴが好きで好きでたまらない。そんな武藤彩未の気持ちがひしひし伝わってきたライブだったと感じる。多少のミスはあったものの、2時間20分という長丁場をたったひとりで乗り切るアイドルは、今の日本には他にいない。2時間を長いと感じさせず、もっと聴いていたいと思わせるライヴの出来るアイドルははそんなに多くはない。しかし彼女の進む道はまだまだ始まったばかり。唯一無二のソロアイドルである武藤彩未には、さらなる高みを目指してもらわねばならない。彼女自身のため、そして後に続くさくら学院の後輩たちのためにも。

 最後に地声で「また一緒に熱くなろうね!」と叫んだ武藤。次のライヴは6月9日、10日渋谷・クラブクアトロ2デイズ。ロックな熱いステージになることは間違いない。さらなる進化を目指す次のステージも見逃せないものとなりそうだ。

 会場の外に出ると、涼しい風がヒートアップした身体に心地よい。19歳の武藤彩未。次もまた見たいと多くの人が感じたライヴだったのではないだろうか。


(photo/笹森健一)

セットリスト
01 Are You Ready 2015
02 Doki Doki
03 Seventeen
04 女神のサジェスチョン
05 ミラクリエイション
06 宙
07 Daydreamin’:
08 風のしっぽ
09 とうめいしょうじょ
10 永遠と瞬間
11 RUN RUN RUN
12 パラレルワールド
13 A.Y.M.
14 交信曲第1番変ロ長調
15 OWARI WA HAJIMARI
16 A.Y.M.
アンコール
17 Happy Chance(仮題)
18 未来へのSign
19 時間というWonderland
20 明日の風
アンコール2
21 彩りの夏

 
竹崎清彦 アイドル、ファッション、スポーツ、ゲーム攻略本など幅広く執筆。趣味はライヴ観戦。好きなアーティストを追いかけ世界中どこへでも行きます! 80年代モノに詳しい。 

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