今月29日、AKB48は58枚目のシングル『根も葉もRumor』をリリースする。この曲はAKB48として約1年半ぶりのシングルであり、SKE48やNMB48など姉妹グループのメンバーが選抜に入っていない“純AKB48”としてリリースするのは10年9か月ぶりだという。AKB48は数年前から単独での活動に飢えていた。国内各グループの分社化も進み、単独でリリースする環境は整っていた。
メンバーの士気は高い。自分たちだけのシングルがやっと出せる。それは念願であり、長い間隠してきた本音だった。
この喜びをメンバーはロックダンスで表現している。メンバーの多くは初挑戦することになったジャンルのダンスだったので、踊るために必要な筋肉を作ることからレッスンは始まった。1日に3時間。これが1か月続いた。ここまで時間をかけて取り組んだシングルは過去にないはずだ。
練習で顔を合わせると、自然に関係は深くなる。練習はキツい。だが、乗り越えようと励まし合う。レッスンを通して、以前よりも強固な関係性を手に入れた。
音楽番組の初披露は好評を博した。「揃っている」「気合いを感じる」といった声が相次いだ。公式のダンス動画の再生回数は147万回を突破した(9月8日現在)。
最近、そんな話をメンバーの取材で聞いた。そこで感じたのは、『根も葉もRumor』と『マジムリ学園』は同一線上にあるではないかということだ。
たしかにポジションや役柄はある程度決められたもので、選抜制度もある。センターも主演も岡田奈々だ。しかし、シングルのMVや舞台から感じられたものは、グループが一枚岩になることだった。
約10年前、AKB48には神7と呼ばれるメンバーがいた。現役メンバーに神7の知名度があるかというと、それはない。束になっても適わないことは、現役たちは痛いほどわかっているだろう。
だとしたら、個の力を見せるのではなく、集団の力を示せばいい。間奏のタットダンスなどはまさに集団だからこそなせるわざであり、2021年のAKB48を象徴しているように見えてならない。
「三本の矢」の教えにもあるように、一人の力はたかが知れている。個でテレビに出たとしても、あるいは特定のメンバーのYouTubeチャンネルがバズったとしても、個人が知名度を上げるだけだ。グループが人気を得るためには、グループ自体に魅力がなくてはならない。個人の集合体がグループではない。