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UPDATE|2021/08/20

西島秀俊×鬼才監督・濱口竜介が語る、カンヌ席巻『ドライブ・マイ・カー』が3時間の長尺でも“短い”ワケ

濱口竜介×西島秀俊 撮影/西邑泰和



──『SAAB 900』と言えば、すでに生産が中止されている80年代のヴィンテージモデル。公道を実際に走らせての撮影には大小の困難もあったのでは? と想像しますが。

濱口 これは正直、ありましたね。コロナの影響で、劇中では2年前にあたる前半部分でいったん撮影を中断するタイミングで、西島さんのお芝居部分を撮り終えて、「ちょっと車の実景を撮りましょうか」となったタイミングで、血を吐くように赤いオイルが車から漏れだして。「頑張ってたんだな、おまえ」って気持ちにはなりました。

西島 あれは確かにちょっと感動しましたよね。

濱口 北海道での撮影時にもチョロチョロと漏れていて、本当に満身創痍で(笑)。なんとか限界まで頑張ってくれましたけどね。

──ちなみに、お二人は車に対して、家福のような特別なこだわりはありますか?

西島 僕もめちゃめちゃ詳しいってわけじゃないですけど、「この車はたぶんこういう思想をもって作られてるんだろうな」っていうことを感じさせてくれる車は面白いなと感じます。乗っていてワクワクする車もあれば、なかなか思いどおりに操縦させてくれない車もある。それぞれによさがあるし、個人的には乗ればどんな車でも楽しいと思っちゃうタイプではありますね。

濱口 実際、撮影でもたくさん運転していただきましたが、西島さんの運転は本当に見事なものでしたよ。僕自身は、免許を持っているだけでほとんど自分では乗らないので、車に関しては何もわかっちゃいないんですが(笑)。

――ついつい脱線してしまいましたが、では最後に西島さんから、これから作品を観る読者に向けてひと言メッセージをお願いします。

西島 冒頭の“尺”の話に戻ってしまいますが、ある程度の密度と質量を持った作品なら、それがどんなに大長編であっても、さほど時間は気にならない。『ゲーム・オブ・スローンズ』や『ウォーキング・デッド』のような人気の海外ドラマシリーズも、一気にぜんぶ観るとなると膨大な時間になりますよね。その点で見ても、この作品は感情の密度がものすごく濃いし、四宮(秀俊/撮影監督)さんが撮る映像の強度も素晴らしい。映画館に足を運んでいただければ、2時間59分はきっと当たり前のように過ぎていると思います。出ている人間が自分で言うと、「本当かよ!」と思われちゃうかもしれませんけどね(笑)。
(取材・文/鈴木長月)

ヘアメイク:亀田 雅・スタイリスト:カワサキ タカフミ(西島秀俊)

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