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UPDATE|2021/08/12

ドラマ『お耳に合いましたら。』伊藤万理華が魅せる“ダンス”のような演技力とそのルーツ

ドラマ『お耳に合いましたら。』(テレ東系)


卒業後の伊藤の活動で意外だったのが、しばらくは「舞台」の仕事が多かったことだ。
過去に『すべての犬は天国へ行く』(2015年10月)や『墓場、女子高生』(2016年10月)といった乃木坂46メンバーが複数出演する舞台で存在感を示したが、生田絵梨花や桜井玲香といった他のメンバーに比べると、グループ在籍時に「舞台」のイメージは薄く、彼女の特性を鑑みても「映像」の方が向いていると思っていた。

そんな伊藤が卒業後に初めて出演した舞台が『仮面山荘殺人事件』(2019年9~10月)。東野圭吾による原作を、キャラメルボックスの成井豊が演出した王道ミステリーで、伊藤は「誰もが惹かれる美人」雪絵を演じた。伊藤はストレートな演技でも観る者を魅了することを証明する。

2019年12月に上演された『今、出来る、精一杯。』は、表現力豊かな伊藤と間違いなく相性がいいと予感させた根本宗子の作品。その予感は的中し、伊藤は篠崎ななみとして、精一杯の愛情を歪な形で表現する。根本とは翌年11月にもタッグを組み、配信限定の舞台『もっとも大いなる愛へ』に出演。上映後にフィードバックの時間があり、いわゆる「ダメ出し」をそのまま観客に見せることで、『もっとも大いなる愛へ』は生き物のような作品になった。
最近のインタビューでは、18~19年は悩みの多い時期だったように述懐しているが、グループを離れて舞台に立ったことで、アイドル時代からの繊細な演技に一本筋が通ったように思う。

8月6日、伊藤の初主演映画『サマーフィルムにのって』が公開された。『お耳に合いましたら。』のメイン監督でもある松本壮史がメガホンをとったこの作品は、高校の映画部でくすぶっている時代劇オタクのハダシ(伊藤)が、個性豊かな7人の仲間と映画作りに没頭するストーリーだ。
登場時こそ鬱屈としたシルエットだが、抑えきれない「好き」を創作に向けて躍動するハダシの姿には愛おしさを感じる。創作の苦悩にリアリティがあるのも、これまでクリエイティブな活動をしてきた伊藤ならでは。
『お耳に合いましたら。』のエンディングで、毎回違ったオリジナルのダンスを踊っている伊藤だが、『サマーフィルムにのって』の見せ場となる「あるシーン」でもまた、彼女が踊っているように見えた。
『サマーフィルムにのって』で、伊藤はさらに多くの人に「見つかる」はず。そして、これからも踊るように演じ続けることだろう。

【あわせて読む】伊藤万理華が女子高生役で主演に抜擢、共演・金子大地と語る学生時代「スクールカーストは中の下(笑)」

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